一 訴訟行為には民法八二五条は適用されない。 二 民法八二六条一項の規定による特別代理人の選任申立は、父母が共同で親権を行う場合においても、その一方が単独ですることができる。 三 民法八二六条一項の規定に基づいて選任された特別代理人が親権者のした未成年者所有不動産の担保提供行為を追認することは、その被担保債務について特別代理人自身も連帯保証人となつているときは、同法条にいう「利益が相反する行為」にあたる。
一 訴訟行為と民法八二五条の適用の有無 二 父母が共同で親権を行う場合と民法八二六条一項の規定による特別代理人の選任申立権者 三 民法八二六条一項の規定に基づいて選任された特別代理人が未成年者を代理してした行為が利益相反行為にあたるとされた事例
民法825条,民法826条1項,民訴法49条
判旨
訴訟行為には取引の安全を図る民法825条は適用されず、また家庭裁判所が選任した特別代理人と未成年者との間に利益相反関係がある場合には、同法826条1項が類推適用される。
問題の所在(論点)
1. 共同親権者の一方が他方の意思に反して行った訴訟行為に、民法825条(表現代理的な保護)の適用があるか。 2. 特別代理人と未成年者との間に利益相反がある場合、当該特別代理人の行為は有効か。
規範
1. 訴訟行為は手続の明確性が重視されるべきであり、相手方の善意・悪意によって効力が左右される民法825条は適用されない。 2. 利益相反行為の成否は、行為の客観的性質から外形的に判断すべきである。また、選任された特別代理人と本人との間に別途利益相反関係が生じる場合には、民法826条1項を類推適用し、その特別代理人は権限を行使できず、これに反した行為は無権代理行為となる。
重要事実
未成年者である上告人の父Dが、母Eと共同で行うべき親権をD単独(名義は連名)で訴訟委任し、裁判上の和解において上告人所有の不動産を担保提供した。その後、Dと上告人の利益相反を解消するため特別代理人Gが選任されたが、G自身も当該和解において上告人と同一の債務について連帯保証人となっていた。Gは特別代理人として、Dが行った担保提供行為を追認した。
あてはめ
1. 訴訟行為は一義的に明白である必要があり、職権調査事項でもあるため、民法825条を適用して相手方の善意を保護することは許されない。 2. Gが連帯保証人である場合、上告人の不動産から優先弁済がなされればGの責任が軽減され、逆にGが支払えば代位権が生じるという関係にあり、外形的に見て利益相反にあたる。特別代理人は未成年者の臨時的保護者であるべきところ、本人と利益相反する場合には民法826条1項の類推適用により権限行使が制限されるため、Gによる追認は無権代理行為として無効(追認なき限り効力を生じない)となる。
結論
民法825条の適用を認め、また特別代理人の利益相反性を否定した原判決は破棄を免れない。和解の権限を含む訴訟委任の効力および特別代理人による追認の効力は認められない。
実務上の射程
訴訟行為の特殊性(明確性・職権調査)から民法825条の適用を否定する点は重要である。また、特別代理人選任後であっても、具体的行為において利益相反が生じる場合には類推適用により無権代理となるため、行為時の適格性を個別に検討する際の基準となる。
事件番号: 昭和40(オ)252 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 棄却
甲、乙間に乙名義の所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴訟が係属する場合には、乙の債権者で当該不動産について強制競売の申立をし、強制競売開始決定を得た第三者は、民訴法第七一条の規定により、甲、乙間の右訴訟に当事者として参加することができる。
事件番号: 昭和34(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和37年10月2日 / 結論: 棄却
親権者が自己の負担する貸金債務につき未成年の子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子の養育費に供する意図であつても、民法第八二六条にいう「利益が相反する行為」にあたる。
事件番号: 昭和63(オ)924 / 裁判年月日: 平成3年3月22日 / 結論: 棄却
未成年者甲の後見人に就職した乙及び丙が甲を代理して売買契約を締結した場合において、乙及び丙は甲の実親であり、甲の養父の死亡により戸籍上甲の後見人に就職した旨記載され、ともに正当な後見人となったものと考えて、甲の財産を管理してきたもので、右売買に右両名が後見人として関与したことにより、甲の利益が損なわれたわけではなく、甲…
事件番号: 昭和41(オ)79 / 裁判年月日: 昭和42年4月25日 / 結論: 棄却
親権者が、その経営する事業につき、第三者の援助を仰ぎたいと考えて、子の財産を右第三者に贈与する契約を締結したとしても、右は親権者の単なる内心の意図にすぎず、民法第八二六条の利益相反行為にはあたらない。