無権代理行為の追認には、取り消しうべき行為についての法定追認を定めた民法一二五条は類推適用されない。
無権代理行為の追認と民法一二五条の類推適用
民法113条,民法125条
判旨
民法125条の法定追認の規定は、無権代理行為の追認には類推適用されない。無権代理行為が有効となるためには、本人による明示または黙示の追認を要する。
問題の所在(論点)
無権代理行為が行われた後、取り消しうべき行為についての法定追認を定めた民法125条の規定を、無権代理行為の追認に類推適用することができるか。
規範
民法125条(法定追認)は、取り消すことができる行為について追認の意思を擬制する規定であるが、無権代理行為の追認については同条の規定を類推適用することはできない。無権代理行為が本人に帰属するためには、本人の意思に基づく積極的な追認(民法113条1項)が必要である。
重要事実
本件は、無権代理行為が行われた後に、民法125条各号に掲げられた行為(全部または一部の履行等)に相当する事実があった事案である。上告人は、かかる事実をもって法定追認が成立し、無権代理行為が本人に対して効力を生じると主張して、原審の判断の違法を訴えた。
事件番号: 昭和54(オ)879 / 裁判年月日: 昭和55年9月26日 / 結論: 棄却
無権代理人がした訴訟行為の追認は、ある審級における手続がすでに終了したのちにおいては、その審級における訴訟行為を一体として不可分的にすべきものであつて、すでに終了した控訴審における訴訟行為のうち控訴提起行為のみを選択して追認することは許されない。
あてはめ
法定追認(125条)は、取消権者が追認をすることができるようになった後に、一定の行為をした場合に追認したものとみなす規定である。これに対し、無権代理行為の追認(113条1項)は、効力が不確定な行為を確定的に有効とする本人の一方的意思表示である。両者は制度の趣旨および性質を異にするため、単に履行の請求や一部の履行があったからといって、無権代理行為に125条を類推適用し、本人の意思を問わず一律に追認を擬制することは妥当ではない。
結論
民法125条の規定は無権代理行為の追認には類推適用されない。したがって、法定追認を前提とする上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
無権代理において、本人が債務の一部を履行した等の事実がある場合、法定追認としてではなく「黙示の追認」の成否として検討すべきである。答案上は、125条の類推適用を否定した上で、当該事実が「追認を認めるに足りる本人の確定的な意思表示」と評価できるか否かを論じる際の判断材料とする。
事件番号: 昭和38(オ)1227 / 裁判年月日: 昭和41年9月8日 / 結論: その他
所有権に基づき土地の明渡を求めた当事者が相手方に対しその土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定した場合には、相手方が右事実を自己の利益に援用しなかつたときでも、裁判所は、その当事者の請求の当否を判断するについてその事実をしんしやくすべきである。
事件番号: 昭和54(オ)549 / 裁判年月日: 昭和57年11月26日 / 結論: 破棄差戻
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事件番号: 昭和57(オ)1392 / 裁判年月日: 昭和60年11月29日 / 結論: 棄却
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