所有権に基づき土地の明渡を求めた当事者が相手方に対しその土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定した場合には、相手方が右事実を自己の利益に援用しなかつたときでも、裁判所は、その当事者の請求の当否を判断するについてその事実をしんしやくすべきである。
当事者の主張した自己に不利益な事実で相手方の援用しないものが訴訟資料となるとされた事例
民訴法186条
判旨
無権代理人が本人を相続した場合、無権代理行為は相続により当然に有効となる。これに対し、本人が無権代理人を相続した場合は、本人が追認を拒絶しても信義則に反しない限り、当然に有効とはならないが、共同相続人がいる場合は、その全員の追認がない限り有効とならない。
問題の所在(論点)
民法113条1項に関連し、本人が無権代理人を他の相続人と共に共同相続した場合に、無権代理行為が当然に有効となるか、あるいは追認権の行使に全員の同意が必要かが問題となる。
規範
無権代理人が本人を相続した場合、相続人(無権代理人)は本人の地位を承継し、自己の行った代理行為につき追認拒絶権を行使することは信義則に反するため、当該代理行為は当然に有効となる(民法113条1項、117条)。これに対し、本人が無権代理人を相続した場合、本人は無権代理人の債務を承継するものの、本人自身の地位において追認拒絶権を保有するため、当然に有効とはならない。もっとも、本人が無権代理人を他の者と共に共同相続した場合、無権代理行為の追認権は不可分であり、共同相続人全員が追認しない限り、当該無権代理行為は有効にならない。
重要事実
本件では、無権代理人が本人の不動産を勝手に処分(または抵当権設定等の行為)した。その後、無権代理人が死亡し、本人が他の相続人(本判決の文脈では共同相続の事案)と共に無権代理人を相続した。原審は、相続により無権代理行為が有効になると判断したが、最高裁は共同相続の性質を鑑み、当然に有効とは認められないとして原審の判断を破棄した。
事件番号: 昭和35(オ)3 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 破棄差戻
本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人の無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。
あてはめ
無権代理人が本人を単独相続した場合と異なり、本人が無権代理人を相続した場合は、本人の資格と無権代理人の資格が併存する。特に共同相続の場合、無権代理人が負っていた「相手方に対する責任(117条)」や「追認をなすべき地位」は承継されるが、追認権自体は相続人全員に帰属する不可分の権利である。したがって、他の共同相続人全員が追認しない限り、本人としての追認拒絶権は失われず、無権代理行為が当然に有効になることはない。本件では、共同相続人の一部である本人が追認を拒絶している以上、全体として有効とは解されない。
結論
本人が無権代理人を他の相続人と共に相続した場合、共同相続人全員が追認しない限り、無権代理行為は当然に有効とはならない。したがって、原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
無権代理と相続の類型(無権代理人による本人相続、本人による無権代理人相続、共同相続)を峻別する際のリーディングケースである。答案では、誰が誰を相続したかを確定し、信義則(1条2項)による制限の有無や、追認権の不可分性を論拠として使い分ける必要がある。
事件番号: 平成4(オ)87 / 裁判年月日: 平成5年1月21日 / 結論: 棄却
無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。 (反対意見がある。)
事件番号: 昭和39(オ)1267 / 裁判年月日: 昭和40年6月18日 / 結論: 棄却
無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和58(オ)1362 / 裁判年月日: 昭和63年3月1日 / 結論: 破棄差戻
無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和32(オ)640 / 裁判年月日: 昭和35年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権利者による処分行為であっても、真の権利者が後日これを追認した場合には、特段の事情のない限り、当該処分行為は処分時に遡って有効となる。また、中間者に対する登記抹消請求が認められる場合であっても、最終譲受人に対する請求が排斥されることはあり得る。 第1 事案の概要:本件不動産の所有者である上告人は…