判旨
無権利者による処分行為であっても、真の権利者が後日これを追認した場合には、特段の事情のない限り、当該処分行為は処分時に遡って有効となる。また、中間者に対する登記抹消請求が認められる場合であっても、最終譲受人に対する請求が排斥されることはあり得る。
問題の所在(論点)
無権利者によってなされた不動産の処分行為につき、真の権利者が後日これを確認し追認した場合に、その処分は有効となるか。また、中間名義人に対する請求が認容される場合でも、譲受人に対する抹消請求が排斥されることがあるか。
規範
無権利者が自己の名称で他人の財産を処分した場合、本来その処分は無効である。しかし、真の権利者が当該処分を追認したときは、民法116条の類推適用により、処分の時に遡ってその効力が本人に帰属し、有効な処分として確定する。また、中間者の登記の無効を理由とする抹消請求と、その中間者からの譲受人に対する抹消請求の要否は別個に判断される。
重要事実
本件不動産の所有者である上告人は、Dが勝手に自己名義に登記を移転した上で第三者(E及び被上告人B6)に売却したことに対し、D及びその譲受人ら(被上告人ら)を相手取り登記抹消を請求した。しかし、上告人はDによる無断処分を知った後、原審が認定する「諸般の行為」によって当該処分を認める態度を示していた。
あてはめ
Dは本件土地の処分権を有していなかったが、上告人はその後の諸般の行為(判決文からは具体的な行為態様は不明だが、原審の認定に基づく)によって、Dが処分権なくしてした無効な売渡処分を追認したものと認められる。追認によりDの処分行為は有効となり、譲受人らは正当に所有権を取得する。したがって、譲受人である被上告人らに対する登記抹消請求は理由がない。なお、Dに対する抹消請求のみが認められた第一審の結論を維持した原判決に、必要的共同訴訟の法理等の違法はない。
結論
無権利者の処分を追認した以上、その処分は有効となり、譲受人に対する登記抹消請求は認められない。上告棄却。
事件番号: 昭和32(オ)723 / 裁判年月日: 昭和34年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条の表見代理における「正当な理由」の存否は、代理人の年齢や家族関係、取引相手との距離等の具体的事情を総合考慮して判断される。本件では、80歳の父が子の代理人として振る舞った際、相手方が近隣居住者であっても直ちに過失があるとはいえず、代理権があると信じるに足りる正当な理由が認められた。 第…
実務上の射程
無権代理(113条等)ではなく、無権利者の処分行為に関する追認の有効性を認めたリーディングケースである。答案上は、他人物売買の枠組みではなく「無権利者の処分と追認」として整理し、116条類推適用の根拠として用いる。また、登記抹消請求訴訟が通常共同訴訟であることを示唆しており、合一確定の要否の文脈でも参照し得る。
事件番号: 昭和32(テ)2 / 裁判年月日: 昭和32年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、民法177条の解釈に関して、背信的悪意者排除の法理を示した原審の判断を維持し、特別上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:本件判決文の本文からは具体的な事実は不明である。ただし、参照された「民法177条の解釈に関する原判示」においては、特定の譲受人が先行する譲渡の存在を知りつつ、譲…
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…
事件番号: 昭和39(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和41年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員借入の委任を受けた代理人が不動産を売却した事案において、本人に直接確認せずとも表見代理の「正当な理由」が認められ得ること、及び借入の手段を一任された場合は処分権限も含むと解されることを示した。 第1 事案の概要:上告人(本人)は、訴外Dに対し、本件田を担保として金員を借り入れることを委任し、そ…
事件番号: 昭和38(オ)431 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 破棄自判
一 不動産登記用紙の閉鎖の回復手続を求める訴は、右閉鎖が違法にされた場合でも、許されない。 二 行政事件訴訟特例法のもとにおける行政処分の無効確認判決は、第三者に対しても効力を有する。