大阪市内の郵便局に書留速達郵便物として差し出した控訴状が、通じて四日を費して名古屋市内の裁判所に配達され、控訴代理人の予知できない事情に基づく郵便物延着の疑をさしはさみうるにかかわらず、この間の事情を審究せず、右郵便物配達の時にはすでに控訴期間が経過していたとの理由で、控訴を不適法として却下した判決には、審理不尽の違法がある。
控訴期間の不遵守が控訴代理人の責に帰すべからざる事由によるかどうかにつき審理不尽の違法があるとされた事例。
民訴法366条,民訴法159条,民訴法395条6号
判旨
控訴状の郵送が郵便事務上の事故等により延着し控訴期間を徒過した場合、裁判所は、当事者の責に帰すべからざる事由の有無を解明するため、釈明権を行使して主張立証を促すべき義務がある。
問題の所在(論点)
控訴状が速達郵便で差し出されたにもかかわらず、郵便事務上の事故等により控訴期間を徒過して到達した場合において、裁判所が追完の成否について釈明権を行使せずに控訴を不適法として却下することの可否。
規範
訴訟行為の追完(民事訴訟法97条1項)に関し、控訴期間の徒過が当事者の予知できない郵便物の延着等の事情に基づくと疑われる場合には、裁判所は、不遵守が「責めに帰することができない事由」によるものか否かを解明するため、当事者に対して主張立証を促すなどの釈明措置を講じるべきである。
重要事実
控訴代理人は、第1審判決正本の送達を受けた日から12日目である昭和37年3月27日、大阪市内の郵便局から名古屋市内の裁判所宛に控訴状を書留速達郵便で差し出した。しかし、通常であれば期間内に到達するはずのところ、郵便事務上の誤り等の事情により、大阪から名古屋まで4日間を要して期間満了日の翌日に到達した。原審は、この延着の事情を考慮せず、期間徒過のみを理由に控訴を却下した。
事件番号: 昭和45(オ)513 / 裁判年月日: 昭和46年4月20日 / 結論: 破棄差戻
訴訟代理人である弁護士が、所属弁護士会の規則に従い同会を受送達場所、送達受取人と定めて届出ていたところ、同会の送達部から送付を受けた第一審判決正本に「昭和四四年九月二四日受送達」の旨ゴム印が押捺されていたので、同日から二週間内である同年一〇月八日控訴を提起したが、実際は、弁護士会が執行官から右正本の交付を受け送達の効力…
あてはめ
本件では、大阪から名古屋という距離において速達郵便が4日間も費やした事実は、郵便事務上の誤りなど控訴代理人が予知できない特段の事情があったことを強く疑わせる。裁判所は、受付印等からこのような延着の疑いを容易に認識し得たのであるから、控訴代理人に対し、期間不遵守がその責に帰すべからざる事由によるものか、すなわち追完が認められるか否かについて主張立証を促すべきであった。これを怠り直ちに控訴を却下した原審の判断は、審理不尽による理由不備の違法がある。
結論
原判決を破棄し、控訴期間の徒過が「責めに帰することができない事由」によるものか否かを解明させるため、事案を原審に差し戻す。
実務上の射程
郵便事故による期間徒過が疑われる事案において、裁判所の職権探知的・後見的な釈明義務を認めたものである。答案上は、期間徒過の救済(追完)が問題となる場面で、当事者の過失の有無を判断する前提としての裁判所の釈明義務の不履行を指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)760 / 裁判年月日: 昭和27年9月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】送達の方法が従来の慣例と異なる「郵便に付する送達」であったために上告期間を遵守できなかったとしても、それは当事者の責めに帰することができない事由には当たらないため、訴訟行為の追完は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決の送達を昭和27年5月13日に受けたが、上告状を提出したのは上告期間…
事件番号: 昭和39(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和40年11月16日 / 結論: 棄却
売買契約解除の場合に割賦支払済代金は売主において没収する特約があつたとの原告主張を被告が否認する旨主張しているからといつて、原告の原状回復請求に対し、支払済代金の返還をもつて同時履行の抗弁を提出したものとは解されない。
事件番号: 昭和42(オ)346 / 裁判年月日: 昭和43年12月17日 / 結論: 棄却
サイゴン在住の本人が、公示送達の方法による判決正本の送達を知つた後、その責に帰すべき遅延なしに控訴提起の訴訟委任状を弁護士のもとに送附したときには、この時をもつて、控訴期間不遵守の事由が止んだものというべきである。
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…