判旨
民法772条による嫡出の推定は、夫による嫡出否認の訴え(同法774条)のほか、特殊な場合には父を定める訴え(同法773条)に準ずる訴えによって覆し得る。もっとも、本件事実関係が当該訴えを認めるべき場合に当たらない限り、嫡出推定を覆すことはできない。
問題の所在(論点)
民法772条による嫡出の推定を、嫡出否認の訴えによらずに覆すことができるか。また、嫡出推定の制度が憲法13条や14条1項に違反しないか。
規範
民法772条が規定する嫡出の推定を覆す手続は、原則として夫が提起する「嫡出否認の訴え」(同法774条)によるべきである。ただし、特殊な事情がある場合に限り、子の側から提起する「父を定める訴え」(同法773条)に準ずる訴えによって嫡出推定を覆し、救済を求めることが許容される余地がある。
重要事実
上告人(子)は、民法772条の規定により嫡出の推定を受けていたが、実親との関係を確定させるため、嫡出否認の訴え以外の方法として「父を定める訴え」に準ずる訴えを提起した。原審は、嫡出推定を覆す余地自体は認めたものの、本件の事実関係においては当該訴えを認めるべき特別な事情には当たらないとして請求を排斥した。これに対し、上告人が憲法13条や14条1項違反を理由に上告した事案である。
あてはめ
判決文によれば、嫡出否認の訴え以外の方法(父を定める訴えに準ずる訴え)で推定を覆すことが可能な「特殊の場合」が存在し得る点は肯定される。しかし、本件の上告人が置かれた事実関係を具体的に検討しても、右訴えによって嫡出推定を覆すべき正当な理由や救済の必要性が認められる「特殊の場合」には該当しない。したがって、原審の法令解釈および事実認定に憲法違反や公序良俗違反(民法1条の2)の違法はないと判断される。
結論
本件のような事実関係の下では、嫡出否認の訴えによらずに嫡出推定を覆すことは認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、嫡出推定を覆す手続を厳格に解しつつも、理論的には「父を定める訴えに準ずる訴え」の可能性を残した点に意義がある。答案上は、嫡出否認の訴えの期間制限や原告適格が問題となる場面で、例外的な救済手段の有無を論じる際の参照判例となる。ただし、後の判例法理(外観説等)によって実質的な救済範囲は具体化されているため、本判決はその端緒としての位置付けとなる。
事件番号: 昭和31(オ)957 / 裁判年月日: 昭和34年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】人事訴訟において、裁判所が既に十分な心証を得ている場合には、職権証拠調べを行う必要はなく、その限度は裁判所の自由な裁量に委ねられる。また、懐胎可能期間中の情交、他との情交不在、血液型検査の結果等を総合して、特段の事情がない限り親子関係を推認できる。 第1 事案の概要:1. 被上告人(子)は、昭和2…