一 人事事件においても、証拠調の限度は、裁判所が既に得た心証の程度により自由に定め得るものであつて、人訴第三一条は、何等これを制限変更するものではない。 二 内縁の妻が内縁関係成立の日から二百日後、解消の日から三百日以内に分娩した子は民法第七七二条の趣旨にしたがい内縁の夫の子と推定する。
一 人事事件における証拠調の限度 二 内縁の妻が懐胎した子と父の推定
民訴法259条,人訴法31条,民法772条
判旨
内縁関係にある男女間に生まれた子について、民法772条を類推して父の推定が及ぶとしても、法律上の父子関係を確定するためには認知を要し、認知の訴えを提起することは許される。
問題の所在(論点)
民法772条が類推適用される内縁の子について、認知の訴えを提起することはできるか。内縁の子に対する嫡出推定の類推適用の法的性質と、認知の要否が問題となる。
規範
民法772条の嫡出推定は、身分関係の早期安定のため厳格な否認権行使を要する強い推定である。これに対し、内縁の子への同条類推は、事実の蓋然性に基づく立証責任の分配を意味するに過ぎない。したがって、内縁の子は認知がなければ法律上の父子関係が確定せず、戸籍上の届出も受理されないため、認知の訴え(民法787条)を提起する必要性が認められる。
重要事実
内縁関係にあった男女間に子が生まれた。内縁の期間や出生時期から、民法772条の期間(内縁成立から200日後、または解消から300日以内)に該当する状態であった。子は、内縁の夫に対して認知の訴えを提起した。これに対し夫側は、民法772条の類推適用により既に父と推定されている以上、改めて認知を求めることは矛盾しており必要性がないと主張して争った。
あてはめ
嫡出推定が及ぶ嫡出子(民法772条)は、認知の手続を経ずに出生届により父子関係が公示され、これを覆すには嫡出否認の訴えを要する。しかし、内縁関係には婚姻届がないため、戸籍吏には内縁の存否を審査する権限がなく、認知なしに父の戸籍に記載することはできない。内縁の子における推定は、認知の訴訟において、父でないと主張する者が反証責任を負うという証拠法上の意味に留まるものである。したがって、認知がない限り法律上は父として取り扱われず、認知の訴えによる関係確定が必要である。
結論
内縁の子について民法772条を類推すべき場合であっても、父子関係の確定には認知を要するため、認知の訴えは許容される。
実務上の射程
内縁関係における子の法的地位を確定する実務指針となる。内縁でも民法772条の期間計算が類推され得ることを認めつつ、それはあくまで立証責任の転換(父性の推定)に過ぎず、法律上の親子関係成立には依然として認知が必要であることを明確にした点に意義がある。
事件番号: 昭和44(オ)769 / 裁判年月日: 昭和44年11月27日 / 結論: 棄却
民法七七二条の類推適用により父性の推定を受ける子についても、認知の訴の提起にあたつては、出訴期間の制限に関する同法七八七条但書の適用がある。
事件番号: 昭和27(オ)73 / 裁判年月日: 昭和30年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法772条による嫡出の推定は、夫による嫡出否認の訴え(同法774条)のほか、特殊な場合には父を定める訴え(同法773条)に準ずる訴えによって覆し得る。もっとも、本件事実関係が当該訴えを認めるべき場合に当たらない限り、嫡出推定を覆すことはできない。 第1 事案の概要:上告人(子)は、民法772条の…