民法七七二条の類推適用により父性の推定を受ける子についても、認知の訴の提起にあたつては、出訴期間の制限に関する同法七八七条但書の適用がある。
民法七七二条の類推適用により父性の推定を受ける子の認知の訴と同法七八七条但書の適用の有無
民法772条,民法787条
判旨
内縁関係にある男女間に生まれた子について、民法772条を類推適用して父性が推定される場合であっても、父または母の死亡後における認知の訴えについては、民法787条但書の出訴期間(死亡の日から3年)の制限が適用される。
問題の所在(論点)
内縁関係から出生した子が民法772条の類推適用により父性の推定を受ける場合、民法787条但書の認知の訴えの出訴期間(父母の死亡から3年以内)の制限が適用されるか。
規範
民法787条但書が認知の訴えに期間制限を設けた趣旨は、父母の死後に長期にわたって身分関係を不安定な状態に置くことにより、身分関係に伴う法的安定性が害されるのを避ける点にある。法が特段の例外を認めていない以上、父子関係が確実であるからといって直ちに同規定の適用を排除することはできない。内縁関係の成立・解消時期から民法772条を類推適用して父性の推定を受ける場合であっても、同様である。
重要事実
上告人は、内縁関係の成立した日から200日後、かつ内縁関係の解消した日から300日以内に生まれた子である。上告人は、父(または母)の死亡から3年を経過した後に認知の訴えを提起したが、民法772条の類推適用により父子関係が確実であることを理由に、民法787条但書の出訴期間制限は適用されないと主張した。
あてはめ
民法787条但書の趣旨は法的安定性の確保にあり、父子関係の確実性のみをもって例外を認めるべきではない。内縁の妻が懐胎した子について民法772条を類推適用して父性を認定すべきとするのが判例であるが、それにより父性の推定を受けるからといって直ちに期間制限の例外を認めれば、同条但書の趣旨が没却される。したがって、本件においても同条但書は一律に適用されるというべきである。
結論
本件認知の訴えは、民法787条但書の出訴期間を徒過しており、却下を免れない。
実務上の射程
認知の訴えにおける法的安定性の重視を強調した判例である。答案上は、父子関係が科学的に明白(DNA鑑定等)な場合であっても、民法787条但書の期間制限が厳格に適用されることを論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)323 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
一 人事事件においても、証拠調の限度は、裁判所が既に得た心証の程度により自由に定め得るものであつて、人訴第三一条は、何等これを制限変更するものではない。 二 内縁の妻が内縁関係成立の日から二百日後、解消の日から三百日以内に分娩した子は民法第七七二条の趣旨にしたがい内縁の夫の子と推定する。