婚姻成立の日から二〇〇日以内に生まれた子は、婚姻に先行する内縁関係の成立の日から二〇〇日後に生まれたものであつても、民法第七七二条所定の嫡出の推定は受けない。
内縁関係成立の日から二〇〇日後婚姻成立の日から二〇〇日以内に生まれた子は民法第七七二条所定の嫡出の推定を受けるか
民法772条
判旨
民法772条2項にいう「婚姻成立の日」とは婚姻の届出の日を指し、届出から200日以内に出生した子は嫡出推定を受けない。また、内縁期間を含めて200日を経過していても同条の類推適用は認められない。
問題の所在(論点)
民法772条2項にいう「婚姻成立の日」の意義、および、婚姻届出前であっても内縁関係が先行していた場合に、同条を類推適用して嫡出推定を認めることができるか。
規範
民法772条2項にいう「婚姻成立の日」とは、法律上の婚姻関係が成立した日、すなわち婚姻の届出の日を指称する。したがって、婚姻の届出の日から200日以内に出生した子は同条による嫡出推定を受けない。また、たとえ挙式や同棲開始(内縁関係の成立)の時から200日以後に出生したとしても、同条を類推適用することはできない。
重要事実
母Dは、昭和10年3月26日にEと挙式して内縁関係に入り、同年4月20日頃から同棲を開始した。その後、同年7月5日に婚姻届を提出した。母Dは、同年11月26日に被上告人を出生した。被上告人は、上告人を父として認知を請求した。これに対し上告人は、被上告人が内縁開始から200日経過後に出生している以上、民法772条が類推適用され、夫Eの嫡出推定を受ける確定的な子であるから、認知請求は許されないと主張した。
あてはめ
被上告人の出生日は昭和10年11月26日であり、夫Eとの婚姻届出の日である同年7月5日から起算して200日以内である。民法772条2項の「婚姻成立の日」は届出日を指すため、文言上、被上告人はEの嫡出推定を受けない。また、母DとEが挙式や同棲を始めた時期からは200日以上経過しているものの、嫡出推定規定は法的安定性を重視するものであるから、実態としての内縁関係を基礎に同条を類推適用することは認められない。したがって、被上告人は夫Eの嫡出子と推定されない。
結論
被上告人は夫Eの嫡出推定を受ける者ではない。したがって、Eによる嫡出否認がないことを理由に認知請求が妨げられることはなく、上告人に対する認知請求は認められる。
実務上の射程
婚姻届出から200日以内に出生した「推定の及ばない嫡出子」に関する基本判例である。内縁が先行する場合の類推適用を否定しており、形式的な届出日を基準とする。答案上は、父子関係の存否や認知請求の可否が問われた際、まず772条2項の推定が及ばないことを確定させるための論拠として使用する。
事件番号: 昭和44(オ)769 / 裁判年月日: 昭和44年11月27日 / 結論: 棄却
民法七七二条の類推適用により父性の推定を受ける子についても、認知の訴の提起にあたつては、出訴期間の制限に関する同法七八七条但書の適用がある。