内縁の妻が、内縁関係成立の日から二〇〇日後、解消の日から三〇〇日以内に分娩した子は、民法七七二条の趣旨を類推し、内縁の夫の子と推定すべきである。(最高裁判所昭和二九年一月二一日第一小法廷判決参照)
内縁の夫との間に出生した子の推定と民法第七七二条の準用
民法772条
判旨
内縁の妻が、内縁関係成立の日から200日後、解消の日から300日以内に分娩した子は、民法772条の趣旨を類推し、内縁の夫の子と推定すべきである。
問題の所在(論点)
法律上の婚姻関係にない内縁関係にある男女間に生まれた子について、民法772条の嫡出推定規定を類推適用し、父子関係の推定を認めることができるか。
規範
民法772条の嫡出推定規定の趣旨を類推適用し、内縁の妻が内縁関係成立の日から200日を経過した後、または内縁関係解消の日から300日以内に分娩した子は、内縁の夫の子であると推定される。この推定を覆すには、夫の子であることを否定する特段の事情の立証を要する。
重要事実
亡Eと亡Fは、大正11年初春に結婚式を挙げ、事実上の夫婦として同棲(内縁関係)を開始した。両名は同棲から2、3ヶ月で内縁を解消し、Fは実家へ戻ったが、同年12月22日に原告(上告人)を分娩した。この事実は、内縁成立から200日以後、かつ解消から300日以内の出生に該当するものであった。
あてはめ
本件原告は、EとFの内縁関係成立(大正11年初春)から200日以上が経過し、かつ内縁解消(同棲から2、3ヶ月後)から300日以内に出生したことが明らかである。したがって、類推適用によりEの子であるとの推定が働く。原審は、この推定を覆すに足りる「特段の事実」を何ら認定することなく、安易に親子関係を否定しており、法の解釈適用を誤っているといえる。
結論
上告人がEの子でないとする特段の事情が認められない限り、上告人はEの子であると推定されるべきである。原判決を破棄し、当該特段の事情の有無についてさらに審理させるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
内縁関係における準正や認知、相続紛争において、父子関係の立証責任を転換させる強力な規範として機能する。答案上は、内縁成立・解消の時期から懐胎期間を計算し、772条の類推適用の要件を満たすかを検討した上で、推定を覆す反証(いわゆる「推定の及ばない」事情等)の有無を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和44(オ)769 / 裁判年月日: 昭和44年11月27日 / 結論: 棄却
民法七七二条の類推適用により父性の推定を受ける子についても、認知の訴の提起にあたつては、出訴期間の制限に関する同法七八七条但書の適用がある。