一 民法第七八七条但書の規定は、憲法第一三条に違反しない。 二 民法第七八七条但書の規定は、認知の訴の提起に関し、すべての嫡出でない子につき一律平等にその権利の存続期間を制限したものであり、その間に差別を加えたものではない。
一 民法第七八七条但書と憲法第一三条 二 民法第七八七条但書は憲法第一四条の「差別」の規定であるか
民法787条但書,憲法13条,憲法14条
判旨
民法787条但書(現:同条ただし書)に定める認知の訴えの期間制限は、身分関係に伴う法的安定性の保持を目的とするものであり、憲法13条及び14条に違反しない。また、当該期間は除斥期間としての性質を有し、時効の停止(民法161条)や他の特別法の類推適用は認められない。
問題の所在(論点)
1. 民法787条ただし書の期間制限は憲法13条、14条に違反するか。 2. 認知の訴えの提訴期間に民法161条(時効の停止)の類推適用ができるか。 3. 訴訟代理人の死亡等により期間を徒過した場合に、他法令の類推適用により提訴が認められるか。
規範
認知の訴えの提訴期間制限は、身分関係の早期確定による法的安定の保持を目的とする。この期間は除斥期間であって、時効の停止に関する規定(民法161条)を類推適用することはできない。また、父または母の死亡時期が判明している場合、特殊な事情により出訴期間を経過したとしても、特別法の類推適用により期間を延長することは認められない。
重要事実
上告人は、父の死亡後、認知の訴えを提起しようとしたが、訴訟代理人の死亡という事態に遭遇し、民法787条但書(当時の規定では死亡から3年、現行法も同様)が定める期間を経過した後に提訴した。上告人は、期間経過後の提訴を有効とするため、時効の停止(民法161条)や、死亡時期が不明な場合を対象とする「認知の訴の特例に関する法律」の類推適用を主張したほか、期間制限自体が憲法13条(個人の尊重)や14条(法の下の平等)に違反すると主張して争った。
あてはめ
憲法13条違反の点について、認知の訴えの要件設定は立法裁量に属し、身分関係の法的安定保持という目的から期間制限を設けることは相当である。また、憲法14条違反についても、すべての権利者に一律の期間を定めているため差別にはあたらない。さらに、本件期間は除斥期間であり、性質の異なる時効の停止規定(161条)を類推する余地はない。訴訟代理人の死亡についても、父の死亡時期が明らかな本件では、特別法(認知の訴の特例法)を類推適用して期間経過を救済する根拠とはなり得ない。
結論
民法787条ただし書の期間制限は合憲であり、除斥期間としての性質を有するため、上告人の主張する類推適用は認められず、提訴は不適法である。
実務上の射程
認知の訴えにおける除斥期間の厳格な運用を認めた大法廷判決である。答案上では、戸籍上の父が確定しないまま長期放置されることを防ぐ「法的安定性」という制度趣旨を論じる際や、除斥期間における時効規定適用の可否を論じる際の論拠として活用する。
事件番号: 昭和44(オ)769 / 裁判年月日: 昭和44年11月27日 / 結論: 棄却
民法七七二条の類推適用により父性の推定を受ける子についても、認知の訴の提起にあたつては、出訴期間の制限に関する同法七八七条但書の適用がある。