子の父に対する認知請求権は放棄することができないものと解するのが相当である。
認知請求権は放棄することができるか
民法787条
判旨
子の父に対する認知請求権は、身分法上の権利としての性質および民法の法意に照らし、放棄することができない。また、同権利は性質上、長期間行使しないことによって失効することもない。
問題の所在(論点)
民法787条に基づく認知請求権をあらかじめ放棄することの可否、および長期間の権利不行使によって同請求権が失効するか否かが問題となった。
規範
認知請求権は、血縁という真実の親子関係を確定し、子の福祉や身分関係の適正を保護するための身分法上の権利である。その性質上、個人の意思によって自由に処分(放棄)することは許されず、また、権利不行使の状態が継続したとしても、消滅時効の適用を受けず失効することもない。
重要事実
上告人(父)に対し、被上告人(子)が認知を求めた事案。上告人は、被上告人側において認知請求権を放棄した旨の合意があること、および長期間権利が行使されていなかったことを理由に、認知請求は認められないと主張して争った。
あてはめ
認知請求権は、単なる私法上の財産権とは異なり、子の身分を確定させるという公益的性質を併せ持つ。このような権利の性質および民法の法意に照らせば、当事者間の合意による放棄は効力を有しない。また、真実の親子関係が存在する限り、権利行使を怠ったことを理由に身分関係の形成を否定することは、同制度の目的に反するため、失効の理も適用されない。
結論
認知請求権の放棄は認められず、長期間の不行使によっても消滅しない。したがって、被上告人の認知請求は認められる。
実務上の射程
認知請求権の不放棄性・不消滅性を確立した重要判例である。答案上は、認知をめぐる紛争において「不認知の合意」や「権利失効の抗弁」が出された際に、本判例を引用してこれらを一蹴する。身分法上の権利の特質(処分禁止性)を説明する際の中核的根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強制認知請求における親子関係の存否に関し、母が懐胎可能期間中に被告以外の男性と肉体関係を持たなかったと認められる場合には、特段の事情がない限り、被告の子であるとの事実認定は適法である。 第1 事案の概要:被上告人(子)の母Dは、上告人(父とされる男性)と肉体関係を継続していた。Dは、この間に上告人…