父の死亡の日から三九年一か月後に提起された認知の訴えは、当該父の存在及びその死亡の事実を知つた日から三年を経過していないという事情があつても、不適法である。
父の死亡の日から三九年一か月後に提起された認知の訴えが不適法であるとされた事例
民法787条但書
判旨
非嫡出子と父との間の父子関係が認知によって発生すると定める民法の制度は、身分関係の法的安定を保持する上で合理性があり、憲法13条および14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
認知によって初めて父子関係が発生するとする民法の規定、および認知の訴えに出訴期間を設ける制限が、憲法13条(個人の尊重)や14条1項(法の下の平等)に違反し、無効ではないか。
規範
非嫡出子と父との間の法律上の父子関係を成立させるための制度設計は立法的裁量に委ねられる。民法が認知を父子関係発生の要件とするのは、身分関係の法的安定を保持する目的から合理性があり、個人の尊重(憲法13条)や法の下の平等(憲法14条1項)に反しない。
重要事実
上告人(非嫡出子)が、父との間の法律上の父子関係の成立を求めて認知を請求した事案。しかし、本件認知請求の訴えは、民法787条但書が定める出訴期間(父の死亡の日から3年以内、当時の規定)を徒過した後に提起されていた。
あてはめ
父子関係の成立を認知に委ねる制度は、複雑な身分関係を明確にし、法的安定を図るために十分な合理性がある。また、この規定は全ての非嫡出子に対して平等に適用されるため、差別的な扱いにあたるとはいえない。出訴期間の徒過については、身分関係の早期安定を図る趣旨に基づき適法に制限されており、本件では期間徒過後の訴えを不適法とした原審の判断に違憲・違法はない。
結論
本件認知の訴えは、合理的な制限である出訴期間を徒過しており不適法である。民法の認知制度および出訴期間の制限は憲法に違反しない。
実務上の射程
認知制度の合憲性を肯定するリーディングケースの一つ。答案上では、非嫡出子の権利制限が問題となる場面で、身分関係の法的安定という立法的裁量の根拠として引用する。ただし、現在は強制認知の出訴期間(787条但書)が「死亡の日から3年」に延長されている点や、国籍法違憲判決等の後の判例法理との整合性に留意して論じる必要がある。
事件番号: 昭和55(オ)1072 / 裁判年月日: 昭和57年3月19日 / 結論: 破棄差戻
父の死亡の日から三年一か月を経過したのちに右死亡の事実が子の法定代理人らに判明したが、子又はその法定代理人において父の死亡の日から三年以内に認知の訴えを提起しなかつたことがやむをえないものであり、また、右認知の訴えを提起したとしてもその目的を達することができなかつたことに帰すると認められる判示の事実関係のもとにおいては…