父又は母の死亡後における認知請求の訴を認めたうえ、出訴期間をその死亡を知つた日から一年に限定した大韓民国民法八六四条の規定は、その適用の結果がわが国の公序良俗に反するものではない。
大韓民国民法八六四条と法例三〇条
法例18条1項,法例30条,民法787条,大韓民国民法864条
判旨
非嫡出子の認知が有効に成立するためには、当時の法例18条1項により、父又は母の本国法と子の本国法の双方の要件を具備する必要がある。父の本国法が定める死後認知の出訴期間を経過した場合は、子の本国法の要件を満たしていても認知は認められない。
問題の所在(論点)
死後認知の訴えにおいて、父の本国法と子の本国法で出訴期間の定めに差異がある場合、いずれの法を適用すべきか。また、外国法上の短い出訴期間を適用することが公序良俗に反するか。
規範
非嫡出子認知の要件に関する準拠法について、当時の法例18条1項(現行の通則法29条1項参照)は、認知する側の本国法と、認知される子の本国法の双方を適用するものと解される。したがって、認知が有効に成立するためには、一方において父又は母の本国法による認知の要件を具備するとともに、他方において子の本国法による認知の要件を具備するという「累積的適用」が必要である。また、外国法による出訴期間の制限が日本民法より厳格であっても、直ちに公序(法例30条、現行通則法42条)に反するとはいえない。
重要事実
上告人ら(子)は日本国籍を有し、父とされるDは韓国籍であった。Dは昭和45年に死亡し、上告人らはその死亡を知った日から1年を経過した昭和48年に、検察官を相手取って認知の訴えを提起した。子の本国法である日本民法787条(当時)では、父の死亡の日から3年以内であれば出訴可能であったが、父の本国法である大韓民国民法864条では、父の死亡を知った日から1年以内に訴えを提起しなければならないと規定されていた。
あてはめ
本件では、法例18条1項に基づき日本法と韓国法が累積的に適用される。子の本国法である日本法上の出訴期間(死亡から3年)は充足しているものの、父の本国法である韓国法上の出訴期間(死亡を知った日から1年)を徒過している。累積的適用においては、双方の要件を充足する必要があるため、一方の要件を欠けば認知は成立しない。また、韓国法が出訴期間を死亡を知った日から1年に限定している点は、日本民法と比較しても不合理とはいえず、公序良俗に反するとまでは認められない。
結論
本件認知の訴えは、父の本国法が定める出訴期間を徒過しており、認知の要件を具備しないため、不適法として棄却される。
実務上の射程
渉外的身分関係における「累積的適用」の典型例である。答案上は、まず通則法(旧法例)の条文から双方の法の適用を導き、死後認知の出訴期間のような「成立要件」については、厳しい方の要件によって遮断されるという論理構成で用いる。公序違反の主張に対する慎重な判断枠組みとしても参考になる。
事件番号: 昭和43(オ)734 / 裁判年月日: 昭和44年10月21日 / 結論: 棄却
一、中華民国の国籍を有する血統上の父が非嫡出子を養育している場合においても、その非嫡出子が日本の国籍を有するときは、認知の届出または認知の裁判を経ないかぎり、いまだ認知の効力は生ぜず、非嫡出子は父に対する認知の訴を提起することができる。 二、中華民国の国籍を有する血統上の父の養育を受けた日本の国籍を有する非嫡出子が父に…