一、中華民国の国籍を有する血統上の父が非嫡出子を養育している場合においても、その非嫡出子が日本の国籍を有するときは、認知の届出または認知の裁判を経ないかぎり、いまだ認知の効力は生ぜず、非嫡出子は父に対する認知の訴を提起することができる。 二、中華民国の国籍を有する血統上の父の養育を受けた日本の国籍を有する非嫡出子が父に対する認知の訴を提起する場合においても、法例三〇条を適用して父に関する準拠法である中華民国民法の適用を排除することを要しない。 三、非嫡出子のためその血統上の父と認められる者に対して認知の訴を提起する場合であつても、その訴に対する原告勝訴の確定判決があるまでは、法例二〇条にいう「父アラサルトキ」にあたる。
一、中華民国の国籍を有する血統上の父の養育を受けた日本の国籍を有する非嫡出子の父に対する認知の訴の許否 二、中華民国の国籍を有する血統上の父の養育を受けた日本の国籍を有する非嫡出子の父に対する認知の訴と法例三〇条 三、法例二〇条にいう「父アラサルトキ」の意義
法例18条1項,法例30条,法例20条,民法779条,民法781条,民法787条,中華民国民法1065条1項,中華民国民法1067条
判旨
国際的な認知の有効性については父と子それぞれの本国法を充足する必要があるが、父の本国法で当然に認知の効力が生じる場合であっても、子の本国法(日本法)に基づき認知の訴えを提起することは許容される。また、認知前の非嫡出子の法定代理権については、父が未確定であるため母の本国法を準拠法とすべきである。
問題の所在(論点)
1. 認知の要件につき父と子の一方の本国法のみを充足すれば足りるか。 2. 二重国籍者の本国法の決定(法例27条1項但書)。 3. 父の本国法で当然認知が成立する場合、日本法上の認知の訴えは適法か。 4. 認知前の非嫡出子の法定代理権の準拠法(法例20条)。
規範
1. 認知の成立要件(法例18条1項)は、父の本国法と子の本国法の双方を累積的に充足する必要がある。 2. 子の本国法(日本法)に基づく認知の訴え(民法787条)の可否は、子の本国法により決定される。父の本国法で認知が当然成立する場合でも、子の保護の観点から日本法上の手続を履践することは同法の趣旨に反しない。 3. 非嫡出子の認知前の法定代理権は「父アラサルトキ」(法例20条後段)に該当するため、母の本国法が準拠法となる。
重要事実
日本国民である母Dから出生した非嫡出子(被上告人)が、中華民国籍の父(上告人)に対し認知を求めた事案。被上告人は出生により日本国籍を取得したが、父による養育の事実から中華民国民法により同国籍も取得し二重国籍となった。父の本国法(中華民国法)では養育の事実により当然に認知の効力が生じるが、子の本国法(日本法)では認知の届出または判決が必要であった。母Dが法定代理人として認知の訴えを提起したところ、その適法性が争われた。
あてはめ
1. 法例18条1項は父・子双方の要件具備を要する(累積的準拠法)。 2. 被上告人は日本国籍を有し、離脱手続も未了であるため、法例27条1項但書に基づき本国法は日本法となる。したがって、日本法上の認知要件(民法787条等)の充足が必要である。 3. 中華民国法は認知の訴えを一般に禁止しておらず、日本法上の訴えを認めることは同法の法意に沿う。よって、法例30条(公序)を待つまでもなく、日本法上の認知の訴えは適法である。 4. 認知確定前は「父アラサルトキ」に当たるため、母の本国法たる日本法(民法818条1項)により、母は単独で親権者として訴えを提起しうる。
結論
本件認知の訴えは適法であり、被上告人の請求を認容した原審の判断は維持される。
実務上の射程
認知の成立に関する累積的準拠法の原則を確認した重要判例である。特に、父の本国法で「当然認知」が成立していても、日本法上の認知の訴えという「手続的要件」を子の本国法(日本法)の要件として要求できる点、および認知前の母の親権の準拠法を法例20条(現行:通則法32条)後段で処理した点は、実務上の指針となる。※現行法下では通則法29条1項が「父又は母」の本国法を選択的準拠法としている点に注意。
事件番号: 平成10(オ)2190 / 裁判年月日: 平成14年11月22日 / 結論: 棄却
国籍法2条1号は,憲法14条1項に違反しない。