大韓民国の国籍を有する者から認知された日本国の国籍を有する者は、大韓民国民法の規定する出訴期間を経過した後においても、認知無効の訴えを提起することができる。
大韓民国の国籍を有する者から認知された日本国の国籍を有する者が大韓民国民法の規定する出訴期間の経過後に提起した認知無効の訴えの許否
法例(平成元年法律第27号による改正前のもの)18条1項,大韓民国民法(1958年法律第471号)862条,大韓民国民法(1958年法律第471号)864条,民法786条
判旨
認知の無効確認の訴えにおいて、認知者と被認知者の本国法が異なる場合、双方の本国法で出訴期間を徒過していない限り、訴えを適法として本案判断をすべきである。法例18条1項の下では、一方の本国法で無効とされ得る限り、認知の効力を否定できる余地を残すべきであるという趣旨に基づく。
問題の所在(論点)
国際的な認知の無効確認の訴えにおいて、認知者と被認知者の本国法が異なり、一方の法律では出訴期間を徒過しているが、他方の法律では期間内である場合、訴えの適法性をどのように判断すべきか(旧法例18条1項の解釈)。
規範
法例18条1項は、認知者と被認知者の各本国法が認知の要件を具備する場合にのみ効力を認める趣旨である。したがって、認知の有効要件については双方の法律を満たす必要がある一方、無効要件については、一方の本国法において無効とされるときは他方の法律で無効とされない場合であっても認知の効力を否定できる。この理から、認知無効の訴えの出訴期間制限については、父及び子の双方の本国法が定める期間を共に徒過していない限り、訴えを適法と解すべきである。
重要事実
韓国籍の父Dが、日本籍の子である上告人を認知したが、上告人は当該認知の無効確認を求めて提訴した。父Dの本国法(韓国民法)によれば、認知を知った日等から1年以内に出訴すべきとの制限があり、本件訴えはこの期間を徒過していた。一方で、上告人の本国法(日本法)によれば、出訴期間の制限はなく、依然として認知の効力を争い得る状態であった。
あてはめ
本件では、父Dの本国法である韓国法によれば出訴期間制限により認知を争うことができない。しかし、被認知者である上告人の本国法である日本法によれば、本件認知の効力を争うことが可能である。法例18条1項の趣旨が、一方の本国法により無効とされる場合には認知の効力を否定できる点にあることに照らせば、双方の本国法で期間を徒過していない限り、訴えを適法とすべきである。したがって、日本法上争い得る本件訴えを不適法として却下することはできない。
結論
本件訴えを不適法として却下すべきではなく、本案について判断すべきである。原審の訴え却下判決は破棄される。
実務上の射程
認知の成立(有効性)については双方の法律を充足する必要があるが、不成立・無効の主張については一方の法律で認められれば足りるという、認知における「累積的適用」の非対称的な構造を示す。渉外的な親子関係の存否を争う実務において、出訴期間のような手続的要件も実体法の準拠法(法例18条、現通則法29条)に従って判断される際の重要な準拠枠組みとなる。
事件番号: 昭和50(オ)93 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
父又は母の死亡後における認知請求の訴を認めたうえ、出訴期間をその死亡を知つた日から一年に限定した大韓民国民法八六四条の規定は、その適用の結果がわが国の公序良俗に反するものではない。
事件番号: 平成25(受)442 / 裁判年月日: 平成26年3月28日 / 結論: 棄却
認知者は,民法786条に規定する利害関係人に当たり,自らした認知の無効を主張することができ,この理は,認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異ならない。