認知の届出が事実に反するため無効である場合には、認知者が、被認知者を自己の養子とすることを意図し、後日、被認知者の母と婚姻した事実があるとしても、右認知届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものとすることはできない。
虚偽の認知届と養子縁組の成否
民法739条,民法781条,民法799条,民法802条2号
判旨
血縁関係のない子に対する認知届は無効であり、その後に認知者が子の法定代理人と婚姻したとしても、当該認知届をもって養子縁組届とみなし有効な養子縁組の成立を認めることはできない。
問題の所在(論点)
事実と異なる認知届がなされた場合において、認知者に養子とする意思があり、かつその後に子の法定代理人と婚姻したという事情があるとき、無効な認知届を養子縁組届とみなして養子縁組の成立を認めることができるか。
規範
虚偽の認知届を養子縁組届として転換することは認められない。養子縁組は当事者間の合意を要する契約(民法799条・739条)であり、認知者の単独行為である認知とはその要件・方式を異にする。また、認知者と被認知者の法定代理人との婚姻をもって、直ちに養子縁組に関する合意があったと解することもできない。
重要事実
上告人は、自己と血縁関係のない被認知者(相手方)について、事実に反する認知の届出を行った。上告人は、相手方を自己の養子とする意図を有しており、その後、相手方の法定代理人と婚姻した。これに基づき、無効な認知届を養子縁組届とみなして、養子縁組の有効性を主張した。
あてはめ
まず、認知は単独行為であり、養子縁組は合意を要する行為であるため、法律上の性質が根本的に異なる。本件において上告人は養子とする意図を有していたが、認知届自体は単独でなされる方式のものである。次に、上告人が子の法定代理人と婚姻した事実は認められるが、婚姻は夫婦間の合意であり、それが当然に「被認知者を養子とする」という養子縁組の合意(代諾合意等)を含むものとは評価できない。したがって、方式の厳格性および合意の欠如から、届出の転換は認められない。
結論
無効な認知届を養子縁組届とみなすことはできず、養子縁組は有効に成立しない。
実務上の射程
婚姻届を認知届とみなす「届出の転換」を否定した判例群(最判昭49・12・23等)の流れを汲むものである。答案上は、身分行為の方式の厳格性と、当事者の真意(合意)の有無を峻別して論じる際に引用する。特に代諾養子縁組の合意を婚姻という別個の身分行為から推認することに否定的な姿勢を示した点に意義がある。
事件番号: 昭和51(オ)1009 / 裁判年月日: 昭和52年2月14日 / 結論: 棄却
認知者の意思に基づかない届出による認知は、認知者と被認知者との間に親子関係があるときであつても、無効である。
事件番号: 平成25(受)442 / 裁判年月日: 平成26年3月28日 / 結論: 棄却
認知者は,民法786条に規定する利害関係人に当たり,自らした認知の無効を主張することができ,この理は,認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異ならない。