甲、乙間に血縁上の父子関係があり、甲が乙を認知する意思を有し、かつ、甲から他人に対し認知届出の委託がされていたときは、届出が受理された当時甲が意識を失つていたとしても、その届出の前に翻意したなど特段の事情のない限り、右届出の受理により認知は有効に成立する。
認知の届出が受理された当時認知者が意識を失つていた場合と認知の届出の効力
民法779条,民法781条
判旨
血縁上の父が子を認知する意思を有し、認知届の作成・提出を他人に委託した以上、届出受理時に父が意識喪失状態であっても、特段の事情がない限り認知は有効に成立する。
問題の所在(論点)
認知の届出(民法781条1項)において、委託後に届出人が意識不明となった場合であっても、届出受理により認知の効力が生じるか。届出時における意思能力の要否が問題となる。
規範
民法781条1項の認知届について、認知者が他人に届出を委託した場合、受理時に本人が意識を失っていても、①血縁上の親子関係が存在し、②父に認知の意思があり、③他人への届出委託がなされているときは、受理前に翻意した等の特段の事情がない限り、認知は有効に成立する。
重要事実
上告人は、血縁上の親子関係にある子を認知する意思を有しており、他人に対して認知届書の作成および提出を委託した。しかし、当該認知届が役所に受理された当時、上告人は意識を失った状態に陥っていた。このような意識喪失下での届出受理による認知の効力が争われた。
あてはめ
本件では、父と子の間に血縁上の親子関係が認められ、かつ、父には子を認知する確定的意思が存在していた。また、父自らが他人に対して届出の作成・提出を委託している。受理時に父が意識を失っていたとしても、委託事実がある以上、受理前に翻意したなどの特段の事情がない限り、当初の認知意思は継続していると評価できる。したがって、届出受理により認知の効力を認めるのが相当である。
結論
本件認知は有効に成立する。認知届の受理時に届出人が意識喪失状態であっても、事前の委託と認知意思に基づき受理された以上、その効力は妨げられない。
実務上の射程
身分行為における意思の尊重と届出の受理という形式的要件の調整を示す判例。死後認知や意識不明時の婚姻届受理など、届出を要する身分行為全般において、事前の委託と継続する意思が認められる場合の有効性を判断する際の基礎となる。答案では、届出時における意思の存否を「翻意等の特段の事情」の有無で判断する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和51(オ)1009 / 裁判年月日: 昭和52年2月14日 / 結論: 棄却
認知者の意思に基づかない届出による認知は、認知者と被認知者との間に親子関係があるときであつても、無効である。