認知者が死亡した後でも、被認知者は、検察官を相手方として、認知無効の訴えを提起することができる。
認知者の死亡後における認知無効の訴えの許否
民法786条,人事訴訟手続法2条3項,人事訴訟手続法32条3項
判旨
認知者が死亡した後であっても、被認知者は、検察官を相手方として認知無効の訴えを提起することができる。
問題の所在(論点)
認知者が死亡した後において、被認知者は認知無効の訴えを提起することができるか。また、その場合の被告は誰か。
規範
認知に係る親子関係が真実に反するときは、認知によって生じた法律効果に関する紛争解決のため、被認知者は親子関係が存在しないことの確定について法律上の利益を有する。また、認知無効の訴えの相手方の地位は一身専属的であり承継の対象とならないため、人事訴訟法の規定を類推適用し、認知者の死後は検察官を相手方とすべきである。
重要事実
被認知者が、認知者との間の親子関係が真実ではないとして認知無効の訴えを提起しようとしたが、既に認知者が死亡していた事案。死後の訴えの可否および相手方が問題となった。
あてはめ
親子関係は身分関係の基本であり、真実に反する認知がなされた場合、それに基づき発生した相続等の現在の法律上の紛争を解決する必要がある。したがって、認知者の死後も被認知者には「法律上の利益」が認められる。また、被告の地位は相続人に承継されないため、人事訴訟手続法(当時)の婚姻無効等の規定を類推し、公益の代表者である検察官を相手方とすべきであると判断される。
結論
被認知者は、認知者の死後であっても、検察官を相手方として認知無効の訴えを提起できる。
実務上の射程
認知の効力を争う実体法上の権利(民法786条等)は、特段の制限がない限り認知者の死後も消滅しないことを示し、手続的には検察官被告とする処理を確立した。実務上、相続紛争等の前提として認知無効を争う際の基本判例となる。
事件番号: 昭和51(オ)1009 / 裁判年月日: 昭和52年2月14日 / 結論: 棄却
認知者の意思に基づかない届出による認知は、認知者と被認知者との間に親子関係があるときであつても、無効である。
事件番号: 昭和26(オ)808 / 裁判年月日: 昭和28年6月26日 / 結論: 棄却
認知の判決が正当な当事者の間に確定している以上、該判決は第三者に対しても効力を有するから、これに対し再審の手続で争うのは格別、もはや第三者も反対の事実を主張して認知無効の訴を提起することはできない。
事件番号: 平成25(受)442 / 裁判年月日: 平成26年3月28日 / 結論: 棄却
認知者は,民法786条に規定する利害関係人に当たり,自らした認知の無効を主張することができ,この理は,認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異ならない。