判旨
人事訴訟において、裁判所が既に十分な心証を得ている場合には、職権証拠調べを行う必要はなく、その限度は裁判所の自由な裁量に委ねられる。また、懐胎可能期間中の情交、他との情交不在、血液型検査の結果等を総合して、特段の事情がない限り親子関係を推認できる。
問題の所在(論点)
1. 人事訴訟における職権証拠調べ義務の範囲と、裁判所の心証形成の関係が問題となる。 2. 情交関係、他との情交の不在、血液型検査結果という間接事実から、実親子関係を推認することの可否が問題となる。
規範
1. 人事訴訟法(旧法3条等)における職権探知主義の下においても、裁判所が当事者の立証により既に十分な心証を得た場合には、常に職権で証拠調べをなすべき義務はなく、その限度は裁判所の合理的な裁量に属する。 2. 認知の訴え等における親子関係の存否は、①母の懐胎可能期間中の被告との情交関係、②同時期における他との情交の不在、③血液型検査の結果等の間接事実を総合し、他に特段の事情がない限り、これらを推認の根拠とすることができる。
重要事実
1. 被上告人(子)は、昭和25年に母Dから出生した。 2. 母Dは、受胎可能期間である昭和24年6月末頃から同年8月頃までの間に、上告人(父とされる人物)と数回にわたり情交関係を持った。 3. 母Dが右期間中に上告人以外の者と情交関係を持った事実は認められなかった。 4. 血液型検査の結果、上告人が被上告人の父であり得ることが示された。
あてはめ
1. 本件において、原審は既に提出された各証拠により十分な心証を得ており、これを超えて職権でさらなる証拠調べを行わなかったことは、裁判所の裁量の範囲内であり適法である。 2. 被上告人の母が懐胎可能期間中に上告人と複数回情交し、他との情交が認められないこと、さらに血液型検査の結果も父子関係を矛盾なく裏付けている。これらの事実を総合すれば、特段の事情がない限り、被上告人は上告人の子であると推認するのが相当である。
結論
原審の事実認定に違法はなく、上告を棄却する。上告人が被上告人の父であるとした原判決は維持される。
実務上の射程
人事訴訟における職権探知の限界と、親子関係を推認するための間接事実の枠組みを示したものである。答案上は、DNA鑑定が一般的となった現代でも、当時の血液型検査と同様に「科学的証拠」と「情交の事実」等を総合して判断する枠組みとして援用可能である。
事件番号: 昭和37(オ)1324 / 裁判年月日: 昭和38年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】非嫡出子とその父との間の親子関係(民法787条)を認定するにあたっては、母の受胎可能期間における情交関係の存否、他者との情交の形跡の有無、父としての言動、及び血液型鑑定の結果を総合的に考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(子)の母は、受胎可能期間中に上告人(父)と継続的に情交を結…