判旨
過失相殺(民法722条2項)は、被害者に生じた損害の総額に対して必ず一律に行わなければならないものではなく、項目別など個別の算定過程において適用することも許容される。
問題の所在(論点)
不法行為による損害賠償請求において、民法722条2項に基づく過失相殺を適用する際、全ての損害項目を合算した総額に対して一律に減額しなければならないか、それとも一部の損害項目等に限定して適用することが許されるか。
規範
不法行為に基づく損害賠償額を算定するに際し、民法722条2項に基づく過失相殺を適用する場合、裁判所は必ずしも全ての損害項目を合算した総額に対して過失相殺を行わなければならないわけではない。個別の損害項目や事情に応じた柔軟な算定手法を採ることも、法の許容する裁量の範囲内である。
重要事実
上告人は、三輪車と相手方の車両がすれ違う際の事故により損害を被った。原審は、三輪車が右方に寄る以前の状況や事故態様を認定した上で、損害額を算定する過程で過失相殺を行った。これに対し上告人は、過失相殺は全ての損害に対して一律に行わなければならないはずであると主張し、原審の算定方法の違法を訴えて上告した。
あてはめ
判決文によれば、原審は損害項目の一部等について過失相殺を実施した。これに対し最高裁は、過失相殺の適用方法は画一的に固定されているものではなく、原審のように必ずしも全ての損害を対象としない手法を採ったとしても、直ちに違法と断じることはできないと判断した。これは損害の公平な分担という制度趣旨に照らし、事実審の合理的な裁量を認めたものといえる。
結論
過失相殺は必ずしも全ての損害に対して画一的に行わなければならないものではなく、原審の判断に違法はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、損害額の算定実務において、損害項目ごとに過失相殺を考慮する余地を示している。答案上は、被害者側の過失をどの範囲で考慮すべきかが問題となる場面で、722条2項の適用手法の柔軟性を支える根拠として活用できるが、現在は「損害の総額から過失割合分を控除する」のが実務上の通例である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和34(オ)15 / 裁判年月日: 昭和35年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為に基づく損害賠償請求において、過失相殺の抗弁が認められるためには、証拠によって相手方の過失が確実に認定される必要がある。 第1 事案の概要:上告人の運転するオートバイと、右折しようとした被上告人の車両が衝突した事案。第一審および原審は、被上告人が右折時に約200メートル前方に上告人のオート…
事件番号: 昭和32(オ)760 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自動車運転者は、前方に同一方向に進行する自転車がある場合、進路の間隔を十分に保ち、自転車の予期せぬ挙動にも対応できるよう減速すべき注意義務を負い、また、使用者が民法715条1項但書による免責を受けるには選任及び監督の両方について相当の注意を尽くしたことを要する。 第1 事案の概要:加害者Aは、自動…