判旨
不法行為に基づく損害賠償請求において、過失相殺の抗弁が認められるためには、証拠によって相手方の過失が確実に認定される必要がある。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、被害者側(被上告人)に過失相殺を適用し得る程度の過失が認められるか。
規範
過失相殺(民法722条2項)の適用にあたっては、相手方の過失を基礎付ける事実が証拠によって確認される必要がある。証拠に基づき過失があることを確認するに足りない場合には、過失相殺の抗弁は採用されない。
重要事実
上告人の運転するオートバイと、右折しようとした被上告人の車両が衝突した事案。第一審および原審は、被上告人が右折時に約200メートル前方に上告人のオートバイを現認していた事実を認定した。これに対し上告人は、当該認定は経験則に反し被上告人に過失がある旨主張して、過失相殺の抗弁を主張した。
あてはめ
原審は本件の全証拠を検討した結果、被上告人に過失があることを確認するに足りないと判断した。上告人の主張は、結局のところ原審による証拠の取捨選択や事実認定の当否を非難するものにすぎず、被上告人に直ちに過失があったと断定することはできない。したがって、証拠上の裏付けを欠く以上、過失相殺の要件を充たさないと評価される。
結論
被上告人に過失があることを確認するに足りないため、上告人の過失相殺の抗弁は採用されず、上告は棄却される。
実務上の射程
過失相殺の抗弁における立証責任の所在を確認する実務上の意義がある。具体的な過失の存在が証拠により確定されない限り、安易に過失相殺を認めるべきではないという事実認定の慎重さを求める規範として機能する。
事件番号: 昭和27(オ)722 / 裁判年月日: 昭和30年1月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】過失相殺(民法722条2項)は、被害者に生じた損害の総額に対して必ず一律に行わなければならないものではなく、項目別など個別の算定過程において適用することも許容される。 第1 事案の概要:上告人は、三輪車と相手方の車両がすれ違う際の事故により損害を被った。原審は、三輪車が右方に寄る以前の状況や事故態…
事件番号: 昭和34(オ)39 / 裁判年月日: 昭和36年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の認定しない事実を前提とするものや、実質的に原審の適法な証拠取捨・事実認定を非難するにすぎない場合は、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決の事実認定に違法があるとして上告を申し立てた。しかし、その主張の内容は、原審が認定した事実とは異なる事実を前提とするものや…