目的物を買受けた上、これを売主に賃貸し、更にこれを解除したことを原因とする目的物の引渡請求と、これを譲渡担保とし、その担保権行使として換価処分するに必要であることを原因とする同一物の引渡請求とは、両者その請求の基礎を同じくする。
目的物を買受けた上売主に賃貸し更にこれを解除したことを原因とする目的物の引渡請求とこれを譲渡担保としたことを原因としその担保権行使のための引渡請求との基礎の同一性
判旨
単純な売買・賃貸借解除に基づく目的物引渡請求と、譲渡担保権に基づく実行としての引渡請求は、法律形式が同一であり、請求の基礎を同じくするものとして訴えの変更が認められる。
問題の所在(論点)
単純な売買・賃貸借解除に基づく引渡請求から、譲渡担保権の実行に基づく引渡請求への変更(または予備的追加)について、「請求の基礎に変更がない」といえるか。また、かかる主張の変更が権利の濫用に当たらないか。
規範
訴えの変更(民訴法143条1項)が許容されるための要件である「請求の基礎に変更がない」とは、両請求の法律形式が同一であるか、または目的物件の引渡請求という点で共通し、社会生活上の基礎となる事実関係が共通している場合に認められる。また、当初の主張と異なる構成を予備的に追加したとしても、直ちに信義則(民法1条2項)に反する権利行使とはならない。
重要事実
被上告人(原告)は当初、本件物件を上告人(被告)から買い受けた後、これを同人に賃貸したが、賃貸借が解除されたとして引渡を求めた。その後、第二審において予備的に、右売買・賃貸借は金銭債権の譲渡担保としてなされたものであり、弁済期徒過により担保権を実行(換価)するため引渡を求めるとの主張を追加した。
あてはめ
本件において、単純な売買・賃貸借解除に基づく引渡請求と、譲渡担保に基づく引渡請求は、いずれも「法律形式」が全く同一である。また、両者は等しく「同一目的物件の引渡請求」という実体を有しており、社会生活上の紛争の解決という点でも共通性が認められる。したがって、両請求はその基礎を同じくするものといえる。さらに、当初の主張と譲渡担保の主張を併置・追加したとしても、担保権の行使という形態・方法に鑑み、不当な権利行使とは評価されない。
結論
本件の訴えの変更は請求の基礎を同じくするものとして適法であり、譲渡担保権に基づく引渡請求は認められる。
実務上の射程
譲渡担保が売買や賃貸借の形式を借用する性質上、法的構成の揺れは生じやすい。本判決は、外形上の法律形式が同一であれば請求の基礎を肯定し、弾力的な紛争解決を認める実務上の指針となる。答案上は、旧訴と新訴で主要事実が共通するかという観点に加え、本判決のように目的物や受けるべき給付が同一であることを強調する。
事件番号: 昭和24(オ)106 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
一 民法第一九二条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し且つかく信ずるにつき過失のなかつたときのことをいい、その動産が統制品であるにかかわらず、割当証明書によらないで買い受けたという事実は、右の善意無過失を決するための要件とならない。…