動産の寄託をうけ一時これを保管しているにすぎない者は民法第一七八条の第三者に該当しない。
寄託動産の保管者と民法第一七八条
民法178条,民法662条
判旨
動産の譲渡を否認するについて正当な利害関係を有しない者は、民法178条にいう「第三者」に該当しない。譲受人に代わって一時的に目的物を保管するに過ぎない占有者は、当該「第三者」にあたらず、譲受人は対抗要件なくして所有権を主張できる。
問題の所在(論点)
譲受人(D)からさらに目的物を譲り受けた者(被上告人)に対し、元の売主であり現在保管者である上告人が、対抗要件(引渡し)の欠缺を主張して引渡しを拒めるか。すなわち、単なる保管者が民法178条の「第三者」に該当するか。
規範
民法178条にいう「第三者」とは、当事者もしくはその承継人以外の者で、動産譲渡の効力(引渡しの欠缺)を主張することについて、法律上の正当な利益を有する者をいう。単なる占有者で、譲受人のために目的物を保管する地位にある者は、これに含まれない。
重要事実
上告人(売主)は、昭和25年4月に本件動産をDに売り渡し、占有改定(寄託)により引き続き保管していた。その後、Dは同年5月に本件動産を被上告人に売り渡したが、Dから被上告人への現実の引渡しや指図による占有移転は行われなかった。被上告人は、所有権に基づき上告人に対して動産の引渡しを求めた。
事件番号: 昭和35(オ)998 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
所有者から物の占有権限を伝来取得したと主張する占有者は、前主たる所有者に対して民法第一八八条の権利推定を援用しえないと同様に、右所有者の包括承継人に対しても、これを援用できない。
あてはめ
上告人は、Dに対して動産を売り渡した際、寄託契約によりDのために目的物を保管する地位に立っている。Dが被上告人に本件動産を転売した際、上告人はDに代わって一時的に物件を保管しているに過ぎない。このような者は、Dから被上告人への譲渡の効力を否定すべき正当な利害関係を有するものとは認められない。したがって、上告人は「第三者」に該当せず、被上告人の所有権取得を認めるべきである。
結論
上告人は民法178条の「第三者」にあたらない。したがって、被上告人は引渡しを受けていなくても、上告人に対し所有権を対抗でき、引渡し請求が認められる。
実務上の射程
対抗要件の「第三者」の範囲を制限する『背信的悪意者』以外の類型として、無権利者や単なる占有者を除外する法理を裏付ける判例である。答案上は、相手方が「正当な利益を有する者」にあたるかを検討する際、単なる占有代理人や保管者に過ぎない場合に本判例を引用して第三者性を否定する。
事件番号: 昭和39(オ)440 / 裁判年月日: 昭和41年4月28日 / 結論: 棄却
一 会社更生手続の開始当時において、更生会社と債権者間の譲渡担保契約に基づいて債権者に取得された物件の所有権の帰属が確定的でなく、両者間になお債権関係が存続している場合には、当該譲渡担保権者は、物件の所有権を主張して、その取戻を請求することはできない。 二 前項の場合において、譲渡担保権者は、更生担保権者に準じて、その…
事件番号: 昭和42(オ)491 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 破棄自判
不動産を譲り受けた者がその旨の登記を経由しないうちに、右不動産について、第三者から、譲渡人を仮処分債務者とする処分禁止の仮処分が執行された場合においても、譲受人が登記なくして仮処分債権者にその権利取得を対抗しうる地位にあつたときは、右譲受人は、右仮処分の執行後も、仮処分債権者に対してその所有権の取得を対抗することができ…
事件番号: 昭和38(オ)1027 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審と同一の証拠資料をもつて心証を異にしても、何ら違法でない。