判旨
代理人による売買契約において、所有者から代理権を授与された者が、本人から指示された代金額の範囲内で売買を行った場合、その効果は本人に帰属する。
問題の所在(論点)
代理人による売買契約において、代理権の有無およびその範囲内での行為といえるか。具体的には、本人が指示した条件に従って代理人が売買を行った場合に、本人への効果帰属が認められるか。
規範
本人が特定の他人に対し、自己を代理して目的物を売却する権限を授与した場合(民法99条1項)、当該代理人が授与された権限の範囲内において本人を代理して行った法律行為は、直接本人に対してその効力を生ずる。
重要事実
上告人(所有者)は、Dに対し、本訴物件の売却を依頼した。その際、上告人はDに対し、代理して売却を行う権限を与え、かつ具体的な代金額を指示していた。Dは上告人を代理して、指示された代金額で被上告人との間で売買契約を締結し、物件を引き渡した。
あてはめ
Dは所有者である上告人から売却の依頼を受け、上告人を代理する権限を有していた。また、Dが締結した売買の代金は上告人が指示した金額であったことから、Dの行為は授与された代理権の範囲内にあるといえる。したがって、Dによる売買の効果は上告人に帰属し、物件は被上告人の所有に属することになる。
結論
本件売買契約は有効な代理行為であり、被上告人は適法に目的物の所有権を取得したため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
代理権の存否および範囲という事実認定のレベルの事案であり、顕名(民法99条1項)や代理権の授与(任意代理)が認められる基本的事案におけるあてはめのモデルとして活用できる。特に「本人の指示通りの行為」が代理権の範囲内であることを簡潔に示す際に有用である。
事件番号: 昭和41(オ)1416 / 裁判年月日: 昭和43年1月18日 / 結論: 破棄差戻
個人経営の時計店の責任者として店舗内における修理販売に従事するほか商品を携帯して外交販売をする権限を与えられた使用人が、自己の小遣銭を得る目的で同一人に対し多数回にわたり店主所有の時計類一四四点を店舗外で時価に比し不当に廉価に売り渡した場合に、店主たる原告が、被告たる買主が質商であること、右買受けに際しては買主は使用人…