判旨
売買契約において、代理人が本人(売主)の承諾を条件として契約を締結した場合、その承諾がなされない限り契約の効力は本人に帰属しない。
問題の所在(論点)
代理人と相手方との間で「本人の承諾」を条件として締結された売買契約において、本人の承諾がない場合に契約の成立または効力帰属が認められるか(代理権の範囲および条件付契約の成否)。
規範
代理人が契約を締結する際、本人(売主)の承諾を効力発生の条件とした場合、当該条件が成就(本人の承諾)して初めて、代理行為の効果が本人に帰属する。これは私的自治の原則に基づき、契約当事者が合意により効力発生時期を制限できるためである。
重要事実
上告人と被上告人の代理人である訴外Dとの間で、本件売買契約が締結された。その際、売主である被上告人の承諾を得ることを条件とする旨の合意がなされていた。その後、被上告人の承諾が得られたかどうかが争点となり、上告審に至った。
あてはめ
原審が認定した事実によれば、本件売買契約は被上告人の代理人Dと上告人との間で「被上告人の承諾」を条件として締結されている。このような条件が付されている以上、被上告人の承諾という客観的事実が認められない限り、契約の効力が本人に及ぶことはない。上告人は代理に関する法解釈の誤りを主張するが、原判決の事実認定に不合理な点は認められず、条件が成就したとはいえない。
結論
本件売買契約は被上告人の承諾を条件として成立したものであり、その承諾がない以上、被上告人に対して契約の効力を主張することはできない。
実務上の射程
本判決は、代理人が「本人の承諾」を留保して契約した場合の私法上の効果を事実認定の問題として処理している。司法試験においては、無権代理や表見代理が問題となる場面で、そもそも「本人の承諾を条件とする合意」がなされている場合には、代理権の有無を論じる前に、条件未成就により効力が否定されるという構成をとる際に参照し得る。
事件番号: 昭和23(オ)129 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
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