判旨
買戻権の行使にあたり、買戻代金を自宅に準備した上で、至近距離にある債権者宅に赴き支払と物件返還を求めたが、債権者が本人との直接交渉を理由に拒絶した場合、代金の提供は有効であり買戻権の行使が認められる。
問題の所在(論点)
買戻権の行使において、代金を「現実の提供」をしたのと同様の状態で準備し、債権者に受領を求めたが債権者が拒絶した場合、期間内に有効な買戻権の行使がなされたといえるか(民法579条、493条)。
規範
債務の履行について、債務者が弁済の準備を整えた上で債権者に対し受領を促す行為が、時間的、空間的、かつ経済的に見て債権者の住所で現実の提供をしたのと取引上同視できる状況にある場合には、有効な弁済の提供(民法493条)がなされたものと解する。
重要事実
買戻権者(被上告人)の代理人は、約定の買戻期限(昭和23年10月30日)の約20日前に、買戻代金5万5000円をいつでも支払えるよう自宅に準備した。その上で、わずか約1町(約109メートル)しか離れていない債権者(上告人)宅を訪れ、土地建物の返還と代金の受領を求めた。これに対し、債権者は「本人(被上告人)が帰ってから直接話をする」と述べて受領を拒んだ。
あてはめ
本件では、代理人が代金を自宅に準備した上で、地理的に極めて近接した債権者宅に赴き、受領と引渡しを明確に求めている。この状況は、債権者の住所で現実に金員を提示したのと取引上選ぶところがない。また、債権者が本人との直接交渉を口実に拒絶している以上、これ以上の提供は不要であり、時間的・空間的・経済的観点から「現実の提供」と同視できる。したがって、期限前の有効な代金提供が認められ、買戻権は適法に行使されたと評価される。
結論
本件買戻権の行使は有効であり、買戻しによる物件の返還請求は認められる。
実務上の射程
買戻権の行使は代金の提供が要件となる(579条)が、厳格な現実の提供そのものが行われなくとも、本判決のように「現実の提供と同視できる状況」があれば足りる。答案上は、債権者の受領拒絶の態度や、提供場所と準備場所の近接性などの事情を具体的に拾い、493条ただし書の「口頭の提供」で足りる場面や、あるいは信義則上提供が不要となる場面との比較で論じる際に有用である。
事件番号: 昭和24(オ)164 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買の予約(民法556条1項)が成立するためには、将来の買受けの相談に応じる意思があるだけでは足りず、具体的な内容の協定が必要である。 第1 事案の概要:不動産の所有者であった上告人は、抵当債務の弁済資力がなく競売に付された際、親譲りの不動産を失うことを惜しみ、親族であるDに対し、後日金策ができた…
事件番号: 昭和45(オ)1229 / 裁判年月日: 昭和46年5月25日 / 結論: 棄却
売買一方の予約において予約完結権を行使するには、代金を提供する必要はないと解するのが相当である。
事件番号: 昭和31(オ)686 / 裁判年月日: 昭和35年10月27日 / 結論: 棄却
一 契約解除の前提としての催告が有効であるためには、少くとも催告と同時に相手方が遅滞に付されることを要する。 二 双務契約上の債務の受領遅滞にある者が契約解除の前提としての催告をするためには、受領遅滞を解消させた上でこれをしなければならない。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。