一 会社更生手続の開始当時において、更生会社と債権者間の譲渡担保契約に基づいて債権者に取得された物件の所有権の帰属が確定的でなく、両者間になお債権関係が存続している場合には、当該譲渡担保権者は、物件の所有権を主張して、その取戻を請求することはできない。 二 前項の場合において、譲渡担保権者は、更生担保権者に準じて、その権利の届出をし、更生手続によつてのみ権利行使をすべきである。
一 会社更生手続の開始と譲渡担保権者の取戻権の有無 二 会社更生手続の開始と譲渡担保権者の権利行使の方法
会社更生法62条,会社更生法67条1項,会社更生法123条,会社更生法124条,会社更生法126条,会社更生法159条
判旨
譲渡担保権者は、会社更生手続において更生担保権者に準じてその権利を行使すべきであり、目的物の所有権を主張して取戻権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
譲渡担保権者が、会社更生手続において、目的物の所有権に基づき取戻権を行使し、その引渡しを請求することができるか。譲渡担保の法的性質と、更生手続における担保権者の地位が問題となる。
規範
譲渡担保契約に基づき目的物の所有権が債権者に移転していても、それが債権担保の目的で行われ、当事者間に債権債務関係が存続している場合には、当該譲渡担保権者は実質的に担保権者の地位にある。したがって、会社更生手続においては更生担保権者に準じてその権利を届け出、更生手続に従ってのみ権利を行使すべきであり、所有権に基づく取戻権(更生法上の取戻権)を認めることはできない。
重要事実
上告会社(債権者)は、訴外D木材株式会社(更生会社・債務者)との間で譲渡担保契約を締結し、本件物件の所有権移転を受けていた。その後、D社について更生手続が開始された。上告会社は、本件物件の所有権が自己に帰属することを理由に、更生手続によらずに物件の引渡しを求める取戻権の行使を主張した。
あてはめ
本件において、上告会社への所有権移転は確定的なものではなく、D社との間の債権債務関係を担保する目的でなされたものである。このような譲渡担保の性質に鑑みれば、上告会社は更生担保権者に準ずる地位にある。更生手続の目的である利害関係人の調整と事業の更生を図る観点から、特定の担保権者にのみ手続外での優先的な回収(取戻権の行使)を認めることは、他の債権者等との衡平を欠き許されない。
結論
譲渡担保権者は取戻権を有しない。したがって、上告会社による引渡請求は認められない。
実務上の射程
会社更生法における取戻権(同法62条)の制限を論じる際のリーディングケースである。譲渡担保が「形式的には所有権移転だが実質的には担保権」であることを前提に、更生手続の団体規律への服従を強調する文脈で活用する。破産法における別除権とは異なり、更生手続では担保権も手続内に取り込まれる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和31(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和36年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の権利を目的とする譲渡担保契約であっても、将来において譲渡人が所有権を取得した上で譲受人に移転させる趣旨であれば有効であり、譲渡人が後に所有権を取得したときは、契約の趣旨に従い譲受人がその所有権を取得する。 第1 事案の概要:債務者Dは、第三者Eから物件を買い受け、代金残額を支払えば容易に所有…