債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。
動産の売渡担保契約と債務者の所有権取得の対抗力の有無
民法178条,民法181条,民法183条
判旨
売渡担保契約において債務者が引き続き担保物件を占有する場合、占有改定による引渡しがあったものと認められ、債権者はこれによって対抗要件を具備する。
問題の所在(論点)
売渡担保契約に基づき債務者が目的物の占有を継続している場合、債権者は占有改定による引渡しを受けたものとして、所有権の取得を第三者に対抗できるか。
規範
売渡担保契約が締結され、債務者が引き続き担保物件を占有している場合には、債務者は占有改定(民法183条)により以後債権者のために占有するものと解すべきである。したがって、債権者はこれにより間接占有権を取得し、動産物権変動の対抗要件たる「引渡し」(民法178条)を具備する。
重要事実
訴外CおよびDは、上告人から15万円を借り入れる際、C所有の物件(本件物件)を売渡担保に供することを約した。その内容は、弁済期に債務の支払をしないときはCが受戻権を失い、所有権が完全に上告人に移転し債務が消滅するというものであった。契約後も、CおよびDは引き続き本件物件を使用して映画館を経営しており、占有を継続していた。
事件番号: 昭和32(オ)1092 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第一九二条の適用はない。
あてはめ
本件において、上告人とCとの間では本件物件を目的とする売渡担保契約が成立している。Cが引き続き本件物件を占有している事実は、占有改定によって上告人のために占有を継続する合意が含まれていると解される。これにより、上告人は本件物件につき所有権とともに間接占有権を取得したといえる。そうである以上、上告人は「引渡し」を受けたものとして、第三者である被上告人に対し、所有権の取得を対抗することができる。
結論
債権者は占有改定による引渡しを了したものといえるから、所有権の取得を第三者に対抗できる。占有改定を認めずに対抗力を否定した原判決には違法がある。
実務上の射程
動産担保全般(譲渡担保等)において、占有改定が対抗要件としての「引渡し」に含まれることを明示した重要判例である。答案上は、動産譲渡担保の対抗要件が問題となる場面で、民法178条および183条を根拠に本判例の規範を提示し、債務者の継続占有を占有改定として評価する流れで使用する。
事件番号: 昭和39(オ)440 / 裁判年月日: 昭和41年4月28日 / 結論: 棄却
一 会社更生手続の開始当時において、更生会社と債権者間の譲渡担保契約に基づいて債権者に取得された物件の所有権の帰属が確定的でなく、両者間になお債権関係が存続している場合には、当該譲渡担保権者は、物件の所有権を主張して、その取戻を請求することはできない。 二 前項の場合において、譲渡担保権者は、更生担保権者に準じて、その…
事件番号: 昭和35(オ)998 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
所有者から物の占有権限を伝来取得したと主張する占有者は、前主たる所有者に対して民法第一八八条の権利推定を援用しえないと同様に、右所有者の包括承継人に対しても、これを援用できない。