占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第一九二条の適用はない。
占有改定による占有の取得と民法第一九二条の適用の有無。
民法192条
判旨
民法192条の即時取得が成立するためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生じさせるような占有を取得することが必要であり、占有改定による引渡しでは足りない。
問題の所在(論点)
無権利者から動産を譲り受けた際、民法192条の即時取得の要件である「占有を始めた」に、占有改定(民法183条)による占有の取得が含まれるか。
規範
民法192条にいう「占有を始めた」というためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上の変更を来さないいわゆる占有改定の方法による取得をもっては足りない。
重要事実
上告人は、無権利者であるDから本件物件を買い受けた。その際、上告人はDから物件の引渡しを受けたが、その態様は占有改定(民法183条)によるものであった。一方で、被上告人B2は真実の権利者から権限を付与されたB1より物件を買い受け、代金完済とともに現実の引渡しを受けていた。上告人は自己が即時取得により所有権を取得したと主張して争った。
あてはめ
本件において、上告人がDから受けた引渡しは占有改定の方法によるものであった。占有改定は、外観上は譲渡人が引き続き目的物を所持し続けるため、一般外観上の占有状態に何ら変更を来さない。したがって、即時取得の成立に必要な「占有を始めた」との要件を充たすような、一般外観上の変更を伴う占有の取得があったとは認められない。結果として、上告人は民法192条による所有権取得を主張することはできない。
結論
占有改定による占有の取得では即時取得は成立せず、上告人は本件物件の所有権を取得しない。
実務上の射程
即時取得の成否が争点となる答案において、占有改定が含まれないことを論証する際の必須のリーディングケースである。本判決の論理(一般外観上の変更の必要性)は、指図による占有移転による即時取得の可否(判例は肯定)を検討する際の比較の視点としても重要となる。
事件番号: 昭和28(オ)952 / 裁判年月日: 昭和30年6月2日 / 結論: 破棄差戻
債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)998 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
所有者から物の占有権限を伝来取得したと主張する占有者は、前主たる所有者に対して民法第一八八条の権利推定を援用しえないと同様に、右所有者の包括承継人に対しても、これを援用できない。
事件番号: 昭和30(オ)225 / 裁判年月日: 昭和32年12月27日 / 結論: 破棄差戻
占有改定により占有を取得したに止まるときは、民法第一九二条の適用はない。