控訴審が第一審と同一の証拠資料をもつて心証を異にしても、何ら違法でない。
第一審と同一の証拠資料により第二審が異なる心証を得ることの適否。
民訴法185条
判旨
動産売買において所有権留保の特約が存在するか否かは事実認定の問題であり、特定の取引慣行が存在する場合であっても、証拠に基づき当該特約の存在が認められないと判断することは裁判所の専権に属する。
問題の所在(論点)
取引慣行が存在する場合に、それと異なる事実を認定(特約の否定)するために高度の反証や特別の理由の説示が必要か。
規範
事実の認定および証拠の取捨選択は、自由心証主義(民事訴訟法247条)に基づき、原則として事実審裁判所の専権に属する。特定の取引慣行が存在する場合であっても、具体的案件における特約の成否は、提出された全証拠を総合して判断されるべきものであり、経験則のみによって当然に特約の存在が推認されるものではない。
重要事実
織機等の製作販売において、高額な機械の割賦販売では売主に所有権を留保する特約を付す慣行が存在すると主張される事案。第一審と同一の証拠資料に基づき、控訴審(原審)は「撚糸機(織機)が買主に引き渡された時点で所有権が移転した」と認定し、所有権留保の特約の存在を否定した。これに対し、上告人は取引慣行に反する事実認定であり、かつ第一審の認定を覆すに足りる特段の理由の判示がないことは違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和35(オ)998 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
所有者から物の占有権限を伝来取得したと主張する占有者は、前主たる所有者に対して民法第一八八条の権利推定を援用しえないと同様に、右所有者の包括承継人に対しても、これを援用できない。
あてはめ
原審は、証人尋問や供述、書証(丙1号証、3号証等)を検討した結果、本件機械の所有権は引渡し時に移転したものと認定している。この認定は口頭弁論に基づく正当なものであり、第一審と同一の証拠資料から異なる心証を得ることも違法ではない。また、特定の取引慣行があるとしても、原審が具体的な証拠関係に照らして特約の不存在を確信した以上、その認定は専権事項であり、取引慣行を覆すための高度な反証の有無を論ずるまでもなく適法である。
結論
原審の事実認定に違法はなく、所有権留保の特約を否定した判断は維持される。上告棄却。
実務上の射程
事実認定の専権に関する基本判例。実務上、取引慣行は事実認定の補助的な判断材料(経験則)になり得るが、裁判所が具体的証拠に基づき慣行と異なる事実を認定することを妨げるものではない。答案上は、自由心証主義の限界や、経験則違反を論じる際の反論として機能する。
事件番号: 昭和31(オ)608 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、行政庁の承認を効力発生の条件とする旨を合意することは契約自由の原則に基づき有効であり、当該承認が得られなかった場合には、不法条件等の特段の事情がない限り、契約の効力は発生しない。 第1 事案の概要:鉱業権者であった上告人とDとの間で、鉱山設備資材の売買契約が締結された。当時、政府…
事件番号: 昭和25(オ)107 / 裁判年月日: 昭和27年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】動産の即時取得(民法192条)において、譲受人が譲渡人の無権利について無過失であるというためには、譲渡人の立場や取引物件の重要性等に照らし、譲渡人が所有権を有するか否かを確認すべき調査義務を尽くす必要がある。 第1 事案の概要:炭鉱の事実上の責任者のような立場にあったDは、真の権利者であるBの使用…