判旨
選挙において氏名の一部が異なる「A正」と記載された投票は、候補者「A忠一」に対する有効な投票とは認められない。
問題の所在(論点)
公職選挙法上の有効投票の判定において、氏名の一部が異なる記載(「A正」)が、特定の候補者(「A忠一」)に対する投票として認められるか。
規範
自書式投票における候補者の特定は、客観的に記載された氏名等に基づき、その投票が特定の候補者に対する意思表示として明確に認識できるか否かによって判断される。
重要事実
選挙において、候補者「A忠一」が存在した。これに対し、投票用紙に「A正」と記載された投票がなされた。上告人は、当該投票が「A忠一」への有効な投票としてカウントされるべきであると主張して争った。
あてはめ
本件における「A正」という記載は、名字の「A」は共通するものの、名前の部分が「正」となっており、候補者である「忠一」とは客観的に別人を示す記載となっている。このような記載は、特定の候補者である「A忠一」に対する投票であると認めるには不十分であり、客観的な意思表示として特定できないと判断される。
結論
「A正」なる投票は「A忠一」に対する投票とは認め難く、無効とした原判決は正当である。
実務上の射程
自書式投票における「記載の誤り」の限界を示す。名字が同一であっても、名前が明らかに異なる場合は、他事考慮や推測による有効判定は否定され、客観的な記載の合致が重視されることを示唆している。
事件番号: 昭和31(オ)734 / 裁判年月日: 昭和31年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の自書式投票において、候補者の氏名の一部に誤記がある場合であっても、全候補者の氏名との照合により特定の候補者に対する投票の意思が客観的に認められるときは、当該投票は有効である。 第1 事案の概要:本件選挙において、ある投票用紙に記載された氏名の「氏」は「D」であり、「名」の二字のうち一…
事件番号: 昭和23(オ)47 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
投票紙自体の記載体樣其他選舉當時の諸般の事情等から見て本件係争の二票は選舉人が不慣れの爲め、初め記載の場所を間違えて候補者の氏名を記載したが、後でそれに氣付いてこれを訂正する目的で、正規の場所即候補者氏名記載欄に再び記載したもので、他意あるものではないと認定したものであることは、原判文上明である、而して右の樣な資料によ…
事件番号: 昭和35(オ)871 / 裁判年月日: 昭和35年12月2日 / 結論: 棄却
a組が候補者A久市が代表取締役である会社名であるとしても、他の候補者A道徳の氏名を明記しa組を附記した投票は右A久市に対する有効投票とはいえない。
事件番号: 昭和28(オ)1039 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
議員候補者の現存する父の氏名を記載した投票であつても、その名が代々襲名され、父は永年病弱で社会的活動を行わず、その候補者は父の名で区長及び農家組合長の職務を行い、父の名は実際上その家の当主である右候補者を指称するものとして取り扱われて来、部落区長の選挙でも父の名を記載した投票は右候補者に対する投票として取り扱われていた…