判旨
民法242条ただし書の規定により権原に基づいて不動産に附属させた物の所有権は、対抗要件(明認方法等)を備えずとも、不動産の譲受人を含む第三者に対抗することができる。
問題の所在(論点)
民法242条ただし書によって取得した附属物の所有権を第三者に対抗するために、明認方法等の対抗要件を備える必要があるか。
規範
民法242条ただし書に基づく所有権は、本来的に円満な権利であり、法の別段の定めがない限り何人にも対抗し得る。民法177条や178条等の対抗要件に関する規定が同条ただし書の場合に準用・適用されるという明文の規定はない以上、公示方法を欠いてもその所有権を第三者に主張することが可能である。
重要事実
被上告人は、正当な権原に基づいて他人の土地に立木を植栽した(民法242条ただし書)。その後、上告人が当該土地の所有者(訴外会社)から、土地とともに当該立木を買い受けたと主張して、立木の所有権を争った。被上告人の立木所有権について明認方法等の公示がなされていたかは判決文上明らかではないが、上告人は対抗要件の欠如を理由に所有権を否定する旨主張した。
あてはめ
民法は不動産(177条)や動産(178条)の対抗要件を規定する一方で、242条ただし書の権利については公示方法等の制限規定を設けていない。解釈によって公示方法(明認方法等)やその効力を創設することは、立法趣旨を逸脱し法的安定性を害する。したがって、正当な権原により附属させた立木の所有権は、公示がなくても当然に維持され、所有権を持たない譲渡人から買い受けた上告人に対してその所有権を対抗できる。
結論
被上告人は、民法242条ただし書に基づき本件立木の所有権を有し、対抗要件がなくとも上告人に対してこれを主張できるため、上告人は立木の所有権を取得できない。
事件番号: 昭和27(オ)350 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法242条ただし書にいう権原によって附属させた物の所有権は、公示方法を具備していなくても第三者に対抗することができる。 第1 事案の概要:本判決文には具体的な事案の詳細は記載されていないが、不動産に附属した物(立木等と推認される)の所有権の帰属およびその第三者に対する対抗力が争点となった事案であ…
実務上の射程
添付(242条)における「権原」ある者への所有権帰属が、対抗要件を不要とする「強い権利」であることを示す。答案上は、土地の譲受人が「第三者」に当たるとしても、242条ただし書が適用される場面では公示不要で所有権を主張できるとする論理で用いる。ただし、明認方法の重要性を説く他判例や学説との調和に留意が必要である。
事件番号: 昭和32(オ)325 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽した立木の所有権を、第三者に対抗するには、公示方法を必要とする。
事件番号: 昭和31(オ)549 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実体上の権利に基づかない増歩登記(地積増加の登記)は無効であり、それにより不動産所有権を取得したとは認められない。また、不法行為者は民法177条にいう「第三者」に該当しないため、真実の所有権者は登記なくして所有権を対抗できる。 第1 事案の概要:上告人は、係争土地(無地番の山林)が隣接する自己所有…
事件番号: 昭和35(オ)900 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
山林を買受け、未登記のままこれに檜等を植栽した者が、その後特に地上立木を除外することなくいわゆる二重売買を受け、所有権移転登記を経た者に対し、その植栽した立木の所有権を主張するためにはこれを公示する対抗要件を必要とする。
事件番号: 昭和40(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和41年10月7日 / 結論: 棄却
いわゆる伝聞証言の証拠能力は当然に制限されるものではなく、伝聞証言の採否は、裁判官の自由な心証による判断に委されているものと解すべきである。