判旨
裁判所が当事者本人の供述を証拠として事実認定を行うことは自由心証主義の範疇であり、当事者が他に立証はないと陳述した場合には、裁判所は立証を促す釈明義務を負わない。
問題の所在(論点)
1. 当事者本人の供述を証拠として採用する際、自由心証主義の範囲を超えるか。 2. 当事者が立証を尽くした旨を述べた場合に、裁判所は釈明権を行使して立証を促す義務(釈明義務)を負うか。
規範
裁判所が当事者本人の供述を措信するに足りると認める場合、これを証拠として事実認定の資料とすることは自由な心証に委ねられている。また、当事者が「他に主張立証なし」と陳述し、訴訟が判決をするに熟していると認められる場合、裁判所は当事者に対してさらに立証を促す責務を負わない。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)において、他に主張や立証はない旨を陳述した。これに対し、裁判所は事件が判決を下すのに適した状態にあると判断して口頭弁論を終結させた。上告人は、当事者本人の供述は通常措信できないとする経験則があること、および裁判所が立証の程度について確信を抱いていない場合には立証を促すべきであること等を理由に上告した。
あてはめ
当事者本人の供述について、これを通常措信できないとする経験則は存在せず、裁判所が信頼に値すると判断すれば、特段の理由を示すことなく証拠採用できる。また、本件では上告人が自ら「他に主張立証なし」と陳述している。このような状況下では、裁判所が当事者の主観的な立証の確信度合いを憶測してまで立証を促す必要はなく、釈明義務の懈怠(釈明権の行使不全)は認められない。
結論
当事者本人の供述を証拠とすることに制限はなく、また自ら立証終了を申し出た当事者に対して裁判所が立証を促す義務はないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和36(オ)929 / 裁判年月日: 昭和37年3月9日 / 結論: 棄却
伝聞証言の証拠能力は必ずしも当然に制限されるものではなく、裁判官の自由な心証による判断に委されていると解すべきである。
自由心証主義(民訴法247条)と釈明権(民訴法149条)の限界を示す。特に、当事者が立証を尽くしたと明言した後の裁判所の釈明義務が否定される場面や、本人尋問の結果を事実認定に用いる際の論法として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)284 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者本人尋問の申出であっても、他に証拠資料(乙号証等)が提出されている場合には、民事訴訟法上の「唯一の証拠」には該当せず、その採用の成否は裁判所の裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は原審において本人尋問の申出を行った。しかし、当該事案においては、既に乙二号証という書証が提出され、証拠資…