判旨
営業財産の一部の処分にすぎない行為は、会社法上の「営業(事業)の譲渡」には当たらず、株主総会の決議を要しない。
問題の所在(論点)
会社法第467条第1項第1号又は第2号に規定される「事業(営業)の全部又は一部の譲渡」の意義と、単なる営業用財産の処分との区別が問題となる。
規範
「営業(事業)の譲渡」とは、単なる営業用財産の譲渡を意味するのではなく、一定の営業目的のために組織され、有機的、一体として機能する財産の全部又は一部を譲渡し、これによって譲渡人が当該営業活動を譲受人に受け継がせ、かつ、譲渡人が法律上の競業避止義務を負うものをいう。
重要事実
上告人は、本件不動産の譲渡が会社法(旧商法)上の「営業の一部の譲渡」に該当し、株主総会の決議が必要であるにもかかわらず、これを欠いているため無効であると主張した。しかし、原審は当該譲渡を単なる営業財産の一部の処分にすぎないと判断した。
あてはめ
本件における不動産の譲渡は、特定の営業目的のために組織化された有機的な財産の移転を伴うものではなく、譲受人に営業活動を継続させる性質のものではない。したがって、それは「営業」そのものの譲渡ではなく、単なる「営業財産の一部」の処分と評価されるべきである。このような処分は、会社の基礎的な組織変更を伴うものではないため、株主総会の決議を要する事項には当たらない。
結論
本件不動産の譲渡は、営業の一部の譲渡には該当せず、株主総会の決議を欠いていても有効である。
実務上の射程
会社法467条1項の「事業の譲渡」の意義を画定したリーディングケースとして活用する。答案上は、譲渡対象が「有機的一体として機能する財産」であるか、及び「譲受人が営業活動を承継するか」を事実関係から拾い、単なる重要な資産の処分(362条4項1号)との区別を明確にする際に引用する。
事件番号: 昭和44(オ)787 / 裁判年月日: 昭和46年4月9日 / 結論: 棄却
商法二四五条一項一号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限界に応じ法律上当然に競業避止義務を…
事件番号: 昭和28(オ)1451 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる営業財産の譲渡は、組織的一体をなす営業財産を譲渡し、かつ譲渡人の経営者的地位を引き継がせる「営業の譲渡」には当たらない。また、代表取締役による代物弁済契約が会社の目的遂行のためになされた場合は、会社の権利能力の範囲内として有効である。 第1 事案の概要:被上告組合は上告会社から地下足袋を買い…
事件番号: 昭和42(オ)408 / 裁判年月日: 昭和42年10月6日 / 結論: 棄却
会社の営業用財産の全部または重要な一部の譲渡であつても、それが営業を構成する各個の財産としてのみの譲渡であるときは、そのために、譲渡会社が当然営業を廃止し、またはその営業の規模を大幅に縮小するのやむなきにいたる等、当該譲渡会社の運命に重大な影響を及ぼす場合であつても、有限会社法第四〇条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ…
事件番号: 昭和37(オ)1400 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定しても弁論主義に反するものとはいえない。
事件番号: 昭和40(オ)1498 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: 棄却
債務者が、被担保債権額以下の実価を有する抵当不動産を相当な価格で売却し、その代金を当該債務の弁済に充てて抵当権の消滅をはかる場合には、右不動産売却行為は、民法第四二四条所定の債権者を害する行為にはあたらない。