商法二四五条一項一号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限界に応じ法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものをいう。
商法二四五条一項一号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」の意義
商法245条1項1号,商法25条
判旨
商法245条1項1号(現行会社法467条1項1号・2号)の「営業(事業)の譲渡」とは、一定の目的のため組織化され有機的一体として機能する財産の移転をいい、譲渡会社が法律上の競業避止義務を負う結果を伴うものを指す。
問題の所在(論点)
特定の財産(物件)を売却することが、株主総会の特別決議を要する「営業(事業)の全部又は重要な一部の譲渡」に該当するか。
規範
商法245条1項1号(現行会社法467条1項1号・2号)にいう営業(事業)の譲渡とは、①一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、②これによって譲渡会社が営んでいた営業的活動を譲受人に受け継がせ、③譲渡会社がその譲渡の限度に応じ、法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものをいう。
重要事実
上告人の代表者Dは、訴外E協同組合に対し、上告人が所有する物件(本件物件)を売却した。上告人の営業目的は製材業であったが、本件物件の売却当時、当該物件は製材業のために組織化され、有機的一体として機能する財産としての性質を既に失っていた。
事件番号: 昭和27(オ)260 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】営業財産の一部の処分にすぎない行為は、会社法上の「営業(事業)の譲渡」には当たらず、株主総会の決議を要しない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産の譲渡が会社法(旧商法)上の「営業の一部の譲渡」に該当し、株主総会の決議が必要であるにもかかわらず、これを欠いているため無効であると主張した。しかし…
あてはめ
本件物件の売却について検討するに、上記規範①の「有機的一体として機能する財産」であるか否かが問題となる。原審の認定によれば、売却時において本件物件は上告人の営業目的である製材業のために組織化された機能を喪失していた。したがって、単なる個別の財産譲渡に留まり、譲渡会社が営んでいた営業的活動を承継させ(規範②)、競業避止義務を負う(規範③)性質の「営業の譲渡」には当たらないと解される。
結論
本件物件の売却は「営業の全部または重要な一部の譲渡」には当たらず、株主総会の特別決議を欠いても有効である。
実務上の射程
会社法467条1項1号・2号の「事業譲渡」の定義として、現在でも実務・試験上不可欠な判例である。「有機的一体性」「事業活動の承継」「競業避止義務の発生」の3要素を論証し、あてはめでは単なる資産の切り売りか、利益を生み出す組織的財産の移転かを判別する際に用いる。
事件番号: 昭和38(オ)211 / 裁判年月日: 昭和41年2月23日 / 結論: その他
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ一部ノ譲渡」とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部を譲渡し、これによつて譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ、法…
事件番号: 昭和42(オ)408 / 裁判年月日: 昭和42年10月6日 / 結論: 棄却
会社の営業用財産の全部または重要な一部の譲渡であつても、それが営業を構成する各個の財産としてのみの譲渡であるときは、そのために、譲渡会社が当然営業を廃止し、またはその営業の規模を大幅に縮小するのやむなきにいたる等、当該譲渡会社の運命に重大な影響を及ぼす場合であつても、有限会社法第四〇条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ…
事件番号: 昭和28(オ)1451 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる営業財産の譲渡は、組織的一体をなす営業財産を譲渡し、かつ譲渡人の経営者的地位を引き継がせる「営業の譲渡」には当たらない。また、代表取締役による代物弁済契約が会社の目的遂行のためになされた場合は、会社の権利能力の範囲内として有効である。 第1 事案の概要:被上告組合は上告会社から地下足袋を買い…