昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ一部ノ譲渡」とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部を譲渡し、これによつて譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ、法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものをいう。
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ一部ノ譲渡」の意義
商法(昭和25年法律167号による改正前)245条1項1号,商法(昭和25年法律167号による改正前)25条
判旨
「営業の譲渡」とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部を譲渡し、これによって譲渡会社が営んでいた営業的活動を譲受人に受け継がせ、譲渡会社が競業避止義務を負う結果を伴うものをいう。
問題の所在(論点)
株式会社がその重要な財産を譲渡すると同時に、譲受人が当該会社の債務や株式を譲り受けた場合、当該財産の譲渡は商法上の「営業の譲渡」に該当し、株主総会の特別決議を要するか。
規範
旧商法245条1項1号(現行会社法467条1項1号・2号)にいう「営業の譲渡」とは、単なる営業用財産の譲渡をいうのではなく、①一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部を譲渡し、②これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または一部を譲受人に受け継がせ、③譲渡会社がその譲渡の限度に応じ、法律上当然に競業避止義務(商法25条)を負う結果を伴うものをいう。
重要事実
上告会社は、その主要な営業用財産(本件不動産)を譲受人(被上告人の前身)に譲渡する契約を締結した。譲受人は本件不動産の譲受と同時に、上告会社の一切の債務を引き受け、かつ上告会社の株式をも譲り受けていた。しかし、上告会社は本件不動産以外にも機械設備等を所有しており、これらは譲渡対象に含まれていなかった。上告会社側は、本件譲渡は実質的に「営業の譲渡」にあたり、株主総会の特別決議を欠くため無効であると主張した。
事件番号: 昭和44(オ)787 / 裁判年月日: 昭和46年4月9日 / 結論: 棄却
商法二四五条一項一号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限界に応じ法律上当然に競業避止義務を…
あてはめ
本件譲渡契約において、上告会社は本件不動産を譲渡したが、機械設備等の他の営業用財産は譲渡の対象外であった。また、譲受人が一切の債務を引き受け、株式を譲り受けたという事実があっても、それだけで「上告会社がその財産によって営んでいた営業的活動」を譲受人に受け継がせたとはいえない。したがって、本件不動産の譲渡は、一定の営業目的のために組織化された有機的一体としての財産の移転、すなわち営業そのものの譲渡には該当しないと解される。
結論
本件不動産譲渡は「営業の譲渡」に当たらない。したがって、株主総会の特別決議を経ていないとしても、当該譲渡契約は有効である。
実務上の射程
会社法467条1項1号・2号の「事業の譲渡」の定義として現在も確立した判例法理である。答案上は、単なる重要な財産の処分(同法362条4項1号)と事業譲渡を区別する際のメルクマールとして、①有機的一体性、②営業活動の承継、③競業避止義務の発生の3要素を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和36(オ)1378 / 裁判年月日: 昭和40年9月22日 / 結論: その他
商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは、一定の営業の目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要なる一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業…
事件番号: 昭和28(オ)1451 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる営業財産の譲渡は、組織的一体をなす営業財産を譲渡し、かつ譲渡人の経営者的地位を引き継がせる「営業の譲渡」には当たらない。また、代表取締役による代物弁済契約が会社の目的遂行のためになされた場合は、会社の権利能力の範囲内として有効である。 第1 事案の概要:被上告組合は上告会社から地下足袋を買い…
事件番号: 昭和27(オ)260 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】営業財産の一部の処分にすぎない行為は、会社法上の「営業(事業)の譲渡」には当たらず、株主総会の決議を要しない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産の譲渡が会社法(旧商法)上の「営業の一部の譲渡」に該当し、株主総会の決議が必要であるにもかかわらず、これを欠いているため無効であると主張した。しかし…
事件番号: 昭和27(オ)108 / 裁判年月日: 昭和28年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の条件が成就するまでの間、一時的に所有権を移転させる合意は仮装のものに過ぎず、真実の所有権移転の効力は生じない。また、他主占有権原に基づき、かつ善意等の要件を欠く場合には、取得時効は成立しない。 第1 事案の概要:被上告人と訴外Dとの間で、本件不動産の所有権移転契約が締結された。しかし、その実…