貸店使用の事実関係(判決理由参照)からみて、借店人が貸店舗内の特定の場所の使用収益をなさしめることを請求できる独立の権利を有するものと認められないときは、その貸店契約については、賃貸借の規定の適用はないと解するのが相当である。
賃貸借の規定が適用されない貸店契約の一事例
民法601条
判旨
借家法上の解約申入れに必要とされる正当事由は、解約申入れの当時において存在することを要する。また、造作買取代金債権は建物に関して生じた債権ではないため、建物の留置権の被担保債権とはならない。
問題の所在(論点)
1. 建物賃貸借の解約申入れにおける「正当事由」の存否を判断する基準時はいつか。 2. 造作買取代金債権を被担保債権として、建物に留置権を行使できるか。
規範
1. 賃貸借契約の解約申入れが有効であるためには、借家法(当時)1条の2に定める「正当の事由」が、遅くとも解約申入れがなされた時点において存在していなければならない。 2. 民法295条1項の留置権が成立するためには、債権が「その物に関して生じた」ものであることを要する。建物賃借人の有する造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権であって「建物に関して生じた債権」ではないため、建物への留置権を成立させない。
重要事実
建物賃貸人である被上告人は、昭和22年6月、賃借人である上告人A3に対し、建物の解約申入れを行った。当時、A3による無断転貸等の信義則違反行為はまだ行われていなかったが、原審は解約申入れ後(昭和24年〜25年)に発生した無断転貸の事実を遡及的に考慮し、解約申入れ時の正当事由を肯定した。また、A3は建物に付加した造作の買取代金債権に基づき、建物の留置権を主張して明渡しを拒んだ。
あてはめ
1. 本件解約申入れは昭和22年6月になされたものである。原審が正当事由の根拠とした無断転貸等の事実は昭和24年7月以降に発生したものであり、解約申入れ当時には存在しなかった。したがって、これら後発の事実を遡及させて解約申入れの正当事由を補認することは、解約申入れ当時の事由を要求する法の趣旨に反し、許されない。 2. 留置権の目的物と債権との牽連性について、造作買取代金債権は建物自体ではなく造作という別個の物から生じた債権である。建物と債権との間に直接の結合関係が認められない以上、民法295条1項の要件を欠く。
結論
1. 正当事由は解約申入れ時に存在する必要があるため、後発事象を根拠に昭和22年の解約申入れを有効とした原判決は違法である(ただし、予備的請求としての無断転貸による解除は別途認められる)。 2. 造作買取代金債権に基づき建物の留置権を行使することはできない。
実務上の射程
解約申入れの正当事由の基準時を「申入時」に限定した点は、後の更新拒絶における正当事由の判断基準(解約申入時から期間満了時までの諸事情を考慮する実務)との比較で重要である。留置権の牽連性に関する判示は、造作買取代金債権と建物との牽連性を否定する確立した判例法理として、司法試験でも頻出の知識である。
事件番号: 昭和25(オ)24 / 裁判年月日: 昭和27年11月18日 / 結論: 棄却
他人の賃借居住中の家屋を買い受けた者の賃貸借の解約申入も、後記事由(第二審判決理由参照)があるときは、正当の事由がある。