判旨
公序良俗に反する給付がなされた場合であっても、不法原因給付の返還を目的とする特約(返還の合意)を締結することは有効である。
問題の所在(論点)
不法原因給付(民法708条)の対象となる給付について、事後にその返還を認める内容の特約(返還の合意)を締結することは許されるか。
規範
民法708条(不法原因給付)の適用がある場合であっても、当事者間において給付した物の返還を目的とする新たな返還の特約を締結することは、私法上の合意として有効である。
重要事実
上告会社は肥料等の販売を目的とする会社であり、その出張所長であった訴外Dが営業に従事していた。本件では、当局の許可を条件とする魚粉の販売契約が締結されたが、当該契約が加工水産物配給規則等の法令に違反し、不法原因給付に該当し得る状況にあった。その後、不法原因給付物の返還等に関する特約がなされたが、その有効性が争点となった。
あてはめ
判決文によれば、本件の魚粉が配給規則上の主として食用に供するものに該当するかは断定し難いとしているが、仮に不法原因給付の性質を有していたとしても、最高裁の先行判例(最判昭28・1・22等)に基づき、不法原因給付の返還の特約自体は有効であると解される。したがって、本件契約において当局の許可を条件とする等の適法な形式が整えられており、当事者間の合意に基づき返還を認めることは法的に正当として是認される。
結論
不法原因給付の返還を目的とする特約は有効であるため、返還を求める請求は認められる。
実務上の射程
民法708条の反射的効果により、本来は給付した物の返還請求権(所有権に基づくものを含む)が否定される場合であっても、任意に返還の合意をすることは私法自治の範囲内として許容される。答案作成上は、708条の原則論を述べた後、判例の射程として「返還の特約」がある場合には例外的に返還請求が認められる根拠として使用する。
事件番号: 昭和25(オ)295 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
不法原因による給付であつても、右給付を返還すべき合意が成立したときは、右合意に基く返還請求については民法第七〇八条の適用はない。