判旨
裁判所は、証拠調べの結果のみならず、弁論の全趣旨を斟酌して事実を認定することができるため、当事者の主張自体から受領拒絶の意思が認められる場合にこれを確認することは適法である。
問題の所在(論点)
証拠調べによらず、弁論の全趣旨、特に当事者の主張自体に基づき事実を認定することは、民事訴訟法上の事実認定の在り方として許容されるか。
規範
裁判所は、事実を認定するにあたり、証拠調べの結果のみならず、口頭弁論の過程で現れた一切の資料や事情(弁論の全趣旨)をも斟酌することができる。
重要事実
被上告人(債務者)が残元利金4万9000円の債務を負担していた事案において、原審は、上告人(債権者)の主張自体から「たとえ弁済の提供があっても、あらかじめ受領を拒絶する意思を表明していた」という事実を認定した。これに対し、上告人は当該事実認定の手続的違法を主張して上告した。
あてはめ
裁判所は、証拠調べの結果に基づくだけでなく、弁論の全趣旨をも斟酌して事実認定を行う権限を有する(民事訴訟法247条参照)。本件において、上告人側の主張内容自体から、被上告人が弁済の提供をしたとしても受領を拒絶する意思が明確に読み取れる以上、これを事実認定の基礎とすることは適法な自由心証の範囲内といえる。
結論
弁論の全趣旨に基づき受領拒絶の事実を認定した原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
自由心証主義(民訴法247条)における「弁論の全趣旨」の機能を認めたものである。証拠調べが困難または未了であっても、当事者の主張の態度や書面の内容から事実を推認できることを示しており、準備書面の記載内容が事実認定に直結し得る実務上の重要性を裏付けている。
事件番号: 昭和32(オ)1217 / 裁判年月日: 昭和36年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官は自由心証主義に基づき、当事者本人尋問の結果のみによっていかなる係争事実をも認定することができ、他の証拠を排斥することも許される。 第1 事案の概要:上告人が本件債務について個人保証をしたこと、および本件公正証書が真正な委任状により作成されたことが争点となった事案である。原審は、当事者本人尋…