判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく賃借権は、同法5条1項の定める10年間の存続期間内において土地の譲受人に対抗できる。また、賃借権者は賃貸人に対し、使用収益の前提となる土地の引渡請求権を有するため、裁判所は当事者の真意を釈明して審理を尽くすべきである。
問題の所在(論点)
1. 処理法2条に基づき取得した賃借権の対抗力の有無およびその期間。2. 賃借人が譲受人に対し妨害排除を求めている場合、裁判所は賃借権に基づく土地引渡請求としての性質を考慮し、釈明権を行使すべきか。
規範
1. 罹災都市借地借家臨時処理法(以下「処理法」)2条に基づく賃借権は、同法5条1項が定める10年間の存続期間中、対抗力を有し、その期間内の土地譲受人に対して対抗することができる。2. 土地賃借権者は、使用収益を目的とする以上、土地所有者(賃貸人)に対して土地の引渡を請求する権利を有する。3. 裁判所は、当事者が妨害排除のみを求めている場合であっても、事案に応じて賃借権に基づく引渡請求の趣旨が含まれていないか釈明権を行使し、審理を尽くすべきである。
重要事実
上告人は、処理法2条に基づく賃借権を主張し、対象土地の譲受人である被上告人に対し、妨害排除を求めて訴えを提起した。上告人は被上告人による土地所有権の取得を不知として争っていたが、原審は被上告人の所有権取得の事実を認定したのみで、上告人が処理法上の賃借権を取得したか否か、および当該権利に基づく引渡請求の成否を十分に審理することなく、上告人の請求を排斥した。
あてはめ
1. 処理法5条1項は存続期間を10年と定めており、この期間内であれば、譲受人に対しても賃借権を対抗できると解される。2. 本件において、上告人が被上告人の所有権取得を不知として単に妨害排除を求めていたとしても、その実質は賃借権の行使である。3. 被上告人の所有権取得が賃借権の存続期間内であるならば、上告人の請求には、賃貸人たる被上告人に対する「使用収益の前提としての土地引渡請求」の趣旨が含まれていると解する余地がある。したがって、原審は釈明権を行使して上告人の賃借権取得の有無を確定すべきであった。
結論
原判決を破棄し、差し戻す。処理法上の賃借権は10年間対抗力を有し、裁判所は賃借権に基づく引渡請求の成否について釈明権を行使し、審理を尽くすべきである。
実務上の射程
特別法による対抗力の特則を認めるだけでなく、民事訴訟における裁判所の釈明義務の範囲についても示唆を与える。特に、不動産賃借権者が対抗力を有する場合において、単なる妨害排除の主張であっても、実質的な権利関係(引渡請求権)を踏まえた審理が求められるという点で重要である。
事件番号: 昭和27(オ)1121 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権放棄の意思表示の有無を判断するにあたっては、必ずしも賃借権を放棄するという積極的な行為が存在する場合に限られず、消極的な行為からもこれを推断することができる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、対象物件の賃借権を保持していたが、その権利を放棄したか否かが争点となった。原審において証拠に基…
事件番号: 昭和27(オ)306 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は当然対抗力をそなえ賃借権者は、これを侵害する者に対し妨害排除を請求することができる。
事件番号: 昭和27(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 破棄差戻
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用を受ける罹災建物の敷地の借地権者は、必ずしも、右建物の滅失当時、その借地権または建物につき登記を有した者に限らないと解すべきである。