判旨
単なる債権回収の委任を受けたに過ぎない受任者が、自己の名で債務者に対し訴えを提起することは認められない。
問題の所在(論点)
債権者から取立委任を受けたに過ぎない受任者が、自己の名で債務者に対し訴えを提起する訴訟遂行権(当事者適格)を有するか。また、この点が相手方によって争われていない場合に裁判所が判断できるか。
規範
訴訟担当が認められるためには、実体法上の権利を有するか、さもなくば法律の規定による授権(法定訴訟担当)または一定の要件を満たす任意的訴訟担当の合意が必要である。単なる取立委任を受けたに過ぎない者は、自己の名をもって債務の履行を請求する訴訟を実施する権能を有しない。
重要事実
上告人は、参加人会社から被上告人に対する工事請負代金債権の取立委任を受けた。これに基づき、上告人は自己の名をもって、被上告人に対し右債務の履行を求める訴訟を提起した。
あてはめ
原判決の確定した事実によれば、上告人は債権の取立委任を受けたにとどまる。このような受任者が自己の名で訴訟を提起することは、原則として訴訟信託を禁じる趣旨(弁護士法72条参照)に反し、正当な当事者適格を欠く。また、訴訟要件たる当事者適格の有無は職権調査事項であるため、上告人の主張自体から権能の欠如が明瞭である以上、被上告人が特段争わなかったとしても、裁判所は不適法として退けることができる。
結論
上告人には当事者適格が認められず、本訴請求は排斥される(却下される)。
実務上の射程
任意的訴訟担当が制限されるべきことを示す基本的判例である。弁護士法72条等の脱法行為を防止する観点から、実質的な利害関係のない単なる取立委任による訴訟遂行は許されないという準則として機能する。
事件番号: 昭和32(オ)786 / 裁判年月日: 昭和35年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権譲渡が行われた場合であっても、譲渡通知の効力に疑義があり、債務者が依然として譲渡人を債権者であると信じて弁済したときは、債権の準占有者(現:受領権限がある外観を有する者)に対する弁済として有効となり得る。 第1 事案の概要:債権者である訴外D建設株式会社は、上告人(譲受人)に対し工事代金債権を…