判旨
賃料不払による無催告解除の特約が存在する場合、その特約に基づく契約の当然消滅を主張することは、意思表示による契約解除を主張するものとは認められない。
問題の所在(論点)
失権約款に基づく契約の当然解除(消滅)の主張が含まれている場合に、裁判所は別途「意思表示による解除」の成否を判断する必要があるか。
規範
賃貸借契約において、賃借人が賃料支払を怠った際に催告なしに契約が当然に解除される旨の特約(失権約款)に基づき契約が終了したと主張する場合、それは意思表示による解除の主張を包含するものではない。
重要事実
上告人(賃貸人)は、被上告人(賃借人)に対し、賃料を一回でも期日に支払わないときは催告を要せず直ちに契約が解除される旨の特約に基づき、契約は既に解除されていると答弁書で主張した。原審は、上告人が意思表示による解除をした事実は認められないと判断したため、上告人はこれを不服として上告した。
あてはめ
上告人の主張は、特約に基づき契約が「当然解除」になったという点に帰着する。これは契約が自動的に失効したという主張であり、上告人が改めて解除の意思表示を行ったという事実を主張するものではない。弁論の全趣旨に照らしても、上告人が意思表示による解除を主張したとは認められない。
結論
失権約款による当然解除を主張するにとどまる場合、意思表示による解除がなされたか否かを判断する必要はなく、原審の判断に違法はない。
実務上の射程
本判決は、失権約款の援用と意思表示による解除の主張を厳格に区別している。実務上は、失権約款に基づく当然消滅の主張だけでなく、予備的に(あるいは独立して)解除の意思表示を行った事実を併せて主張立証する必要がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和39(オ)1180 / 裁判年月日: 昭和40年7月2日 / 結論: 棄却
土地賃借人が賃料の支払を延滞したときは土地賃貸人は催告を要せず土地賃貸借契約を解除できる旨の特約は、借地法第一一条の特約にはあたらない。
事件番号: 昭和26(オ)127 / 裁判年月日: 昭和28年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の放棄は、これにより直接利益を受ける者に対する意思表示によってなされるべきであり、判決言渡期日の変更通知を欠いた手続違背があっても、当事者に具体的な不利益が生じていない限り上告理由にはならない。 第1 事案の概要:上告人は、判決言渡期日の変更に関する通知を受けないまま、変更後の期日において判決…
事件番号: 昭和37(オ)962 / 裁判年月日: 昭和38年11月22日 / 結論: 破棄差戻
約定賃料額ないし増減請求権行使によつて改訂された具体的賃料額を確定することなく、催告にかかる賃料額が相当賃料額に当ることをもつて、賃貸借解除の前提たる賃料支払の催告を有効とした判断には、審理不尽、理由不備の違法がある。
事件番号: 昭和33(オ)1067 / 裁判年月日: 昭和36年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売買において、買主が猶予期限までに残代金を支払わないときは、売主の登記義務の履行を待たずに契約を解除する旨の特約(失権約款)がある場合、その期限の経過により契約は当然に解除される。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(被上告人)と買主(上告人)との間で、残代金の支払について猶予…
事件番号: 昭和59(オ)147 / 裁判年月日: 昭和63年9月8日 / 結論: 破棄差戻
土地賃借権の譲渡契約において、譲渡について地主の承諾が得られなかつたときは、譲渡契約当事者間で協議し、円満に取引を完了する旨の特約がある場合に、譲渡の効力発生について地主の承諾を停止条件とする旨を直接定めた書面上の合意がなく、土地上の建物の売買代金を含む譲渡代金の四割相当の手付金が譲渡契約時に支払われ、譲受人が契約締結…