判旨
権利の放棄は、これにより直接利益を受ける者に対する意思表示によってなされるべきであり、判決言渡期日の変更通知を欠いた手続違背があっても、当事者に具体的な不利益が生じていない限り上告理由にはならない。
問題の所在(論点)
1. 権利の放棄の有効要件として、誰に対する意思表示が必要か。2. 判決言渡期日の変更通知を欠いたまま行われた判決言渡しは、上告理由となる手続違背に該当するか。
規範
権利の放棄は、その放棄によって直接利益を受ける相手方に対する意思表示によって行われるべきである。また、民事訴訟手続において、判決言渡期日の変更通知がなされずに変更後の期日に判決が言い渡された場合であっても、それが当事者の権利に実質的な不利益を及ぼさない限り、上告理由となる違法とは認められない。
重要事実
上告人は、判決言渡期日の変更に関する通知を受けないまま、変更後の期日において判決の言渡しを受けた。これを不服として、手続の違法を主張し、上告を提起したものである。また、権利の放棄に関する意思表示の態様についても争われた。
あてはめ
1. 権利の放棄については、直接の利益を受ける者に対してなされるべきであり、本件においてもその法理が適用される。2. 判決言渡期日の通知を欠いた点について、本件記録上、上告人が当該期日の変更によって具体的な権利上の不利益を蒙った事実は認められない。したがって、適正な手続を欠いた瑕疵はあるものの、判決の結果に影響を及ぼすべき権利侵害があったとはいえない。
結論
本件上告は棄却される。権利の放棄は直接の利益受領者への意思表示を要し、期日変更通知の欠如は実質的不利益がない限り上告理由とならない。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(オ)747 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原判決の事実認定に沿わない独自の事実を前提として憲法違反を主張することは、上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実とは異なる事実を想定し、その想定事実に基づいて憲法違反(違憲)を主張して上告を提起した。 第2 問題の所在(論点):原判決の事実…
権利放棄の相手方の特定という実体法上の論点と、手続違背が上告理由となるための『不利益性』の必要性という訴訟法上の論点の双方に言及している。特に後者は、形式的な手続違背があっても実質的な防御権侵害等がなければ救済の対象とならないという、実務上の『瑕疵の治癒』や『訴訟経済』の観点から活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1062 / 裁判年月日: 昭和29年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料不払による無催告解除の特約が存在する場合、その特約に基づく契約の当然消滅を主張することは、意思表示による契約解除を主張するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、被上告人(賃借人)に対し、賃料を一回でも期日に支払わないときは催告を要せず直ちに契約が解除される旨の特約に基づ…
事件番号: 昭和30(オ)166 / 裁判年月日: 昭和31年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権は一個の債権として放棄することが可能であり、当事者間に賃貸借契約の合意解除が成立したと認められる場合には、当該借地権は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は、いわゆる第六次強制疎開に際し、東京都から本件土地についての借地権喪失に対する補償を受けた。その後、上告人は当該借地権を放棄する意思を示…
事件番号: 昭和27(オ)1008 / 裁判年月日: 昭和28年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告理由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張も含まない場合は、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人が提起した民事上告事件において、その上告理由の内容が検討された。なお、具体的な事案の詳細は判決文からは不明である。 第…
事件番号: 昭和27(オ)609 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告事件において、上告理由が特例法に定める上告理由のいずれにも該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地が特別都市計画区域外の土地であると主張し、自身の賃借申出が有効であるとして争った。しかし、原審(および前審の…