判旨
行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認めるべき場合を除き、適法に取り消されない限り完全にその効力を有する。
問題の所在(論点)
行政庁が一度下した裁決を自ら取り消すことの適法性、および、違法な行政処分が当然無効と解されるための要件(公定力と無効の限界)。
規範
行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認めるべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解すべきである(公定力の理論)。また、訴願裁決庁が一旦なした裁決を自ら取り消すことは原則として許されない。
重要事実
農地委員会の裁定を不服とする被上告人の訴願に対し、茨城県農地委員会は一旦「訴願棄却」の裁決を下した。しかし、その後に被上告人の申出を受けて再議を行い、先の裁決を取り消した上で、改めて「訴願容認」の裁決を行った。この後者の裁決(先の棄却裁決を取り消し、容認に転じた処分)の効力が争点となった。
あてはめ
茨城県農地委員会が、一旦なした棄却裁決を自ら取り消し、改めて容認裁決を行ったことは原則として許されず違法である。しかし、この取消裁決がいまだ適法に取り消されていない以上、その違法が「重大かつ明白」で当然無効と認めるべき場合でない限り、公定力により有効なものとして扱うべきである。本件の裁決取消処分は、当然無効とまでは解することができないため、有効なものとして効力を有する。
結論
本件の裁決取消処分には違法があるものの、重大かつ明白な瑕疵とはいえず当然無効ではないため、適法に取り消されない限り効力を維持する。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(オ)898 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
訴願裁決庁がその裁決を自ら取り消すことが違法な場合であつても、その違法は、取消処分を当然無効ならしめるものではない。
行政処分の公定力と、例外としての無効事由(重大かつ明白な瑕疵)の基準を示したリーディングケースである。答案上は、処分の効力を争う場面において、取消訴訟の排他的管轄の根拠として「公定力」を論じる際や、無効確認訴訟において瑕疵の程度を論じる際の規範として引用する。
事件番号: 昭和26(オ)6 / 裁判年月日: 昭和30年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売渡手続の承認後、農地改革の政策に背反せず、かつ譲受人に耕作能力が認められる場合には、当該承認を後日取り消すことは違法である。 第1 事案の概要:a村に所在する農地について、地域の慣習に基づき、被上告人を耕作者とする旨の合意がなされた。これに基づき農地の売渡手続が行われ、一度は承認されたが、…
事件番号: 昭和30(オ)385 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
農地買収計画に対する異議決定および訴願裁決に理由の記載がなくても、右計画に基く農地買収処分は無効ではない。
事件番号: 昭和27(オ)575 / 裁判年月日: 昭和29年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借または転貸借に基づき農地を適法に占有耕作している事実に加え、行政処分である買収処分が正規の手続を経てなされた場合には、当該処分は有効であり、不法占拠等の瑕疵は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人(Bを除く)らが判示農地を占有耕作していることに関し、農地買収処分の無効等を主張し…