判旨
当事者が借地法の適用を回避する目的で相通じて虚偽の家屋賃貸借契約を締結し、公正証書を作成した場合には、通謀虚偽表示として当該契約は無効となる。
問題の所在(論点)
借地法の適用回避を目的として、当事者が通謀して実体のない家屋賃貸借契約を締結した場合、当該契約は民法94条1項の通謀虚偽表示として無効となるか。
規範
当事者が相手方と通じてした虚偽の意思表示は、原則として無効である(民法94条1項)。特に、強行法規の適用を免れる等の不法な目的があったとしても、真意に基づかない意思表示が合致した場合には、通謀虚偽表示としてその効力は否定される。
重要事実
上告人等と被上告人等は、借地法の適用を回避するという目的を有していた。そのために両者は相通じて、本件家屋について実際には存在しない虚偽の賃貸借契約を締結し、その旨を記載した公正証書を作成した。
あてはめ
本件において、上告人等と被上告人等は「各相通じて」意思決定を行っており、その目的は「借地法の適用を回避するため」であった。この目的を達するために行われた「本件家屋につき虚偽の賃貸借契約を締結」し「その旨の公正証書を作成」した行為は、当事者間に真実の賃貸借意思が存在しないにもかかわらず、外形上の契約を捏造したものといえる。したがって、これは相手方と通じてした虚偽の意思表示に該当し、民法94条1項の要件を充足する。
結論
本件の家屋賃貸借契約は通謀虚偽表示として無効である。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、脱法目的で行われる虚偽の契約関係について民法94条1項を適用した事例である。司法試験においては、脱法行為の成否を論ずる際や、実体とは異なる外形(公正証書等)が作出された場合の契約の効力を否定する根拠として、同条の要件(意思と表示の不一致、相手方との通謀)を認定する際の先例として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)875 / 裁判年月日: 昭和33年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】即決和解の条項が一方当事者に著しく有利であっても、賃貸借解除後の経緯や返り証の不存在等の諸事情を勘案し、通謀虚偽表示等の瑕疵が認められない限り、当該和解は有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人との間で即決和解が成立したが、その条項は被上告人にとって著しく有利な内容であった。この和解は…
事件番号: 昭和27(あ)6836 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: 破棄差戻
第一審判決の確定した事実は「…(判決参照)…」というのである。しかし、本件記録に徴すれば、Aが、被告人のBに対する前記第五六一九一号公正証書による貸金債権六五〇〇〇円の譲渡契約を被告人との間に締結したのは、Aにおいて、右貸金債権が未だ消滅せず尚存在するものと信じたが故か、或は被告人において右公正証書の執行正本を入手し得…
事件番号: 平成13(受)398 / 裁判年月日: 平成16年2月26日 / 結論: 破棄差戻
現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部…
事件番号: 昭和31(オ)643 / 裁判年月日: 昭和32年12月10日 / 結論: 棄却
公証人法第二六条に違反して作成された公正証書であつても、当然に債務名義たる効力を有しないものではない。