公証人法第二六条に違反して作成された公正証書であつても、当然に債務名義たる効力を有しないものではない。
公証人法第二六条に違反して作成された公正証書の効力
公証人法26条,民訴法559条3号
判旨
利息制限法に違反する条項を含む公正証書であっても、当然に債務名義たる効力を失うものではない。一部が無効であっても法律行為全体の無効を来さない限り、請求異議の訴えによりその執行力を全面的に排除することはできない。
問題の所在(論点)
利息制限法に違反する条項を含む公正証書が債務名義としての効力を有するか。また、法律行為の一部が無効である場合に、公正証書による強制執行を全面的に排除できるか。
規範
公証人法26条の規定は、同条に違反して作成された公正証書が当然に債務名義たる効力を有しないとする趣旨ではない。また、公正証書に記載された法律行為の一部が無効であっても、その無効が法律行為全体の無効を来さない限り、請求異議の訴えに基づき当該公正証書の執行力を全面的に排除することはできない。
重要事実
債権者と債務者(上告人)との間で貸借契約が締結され、その内容について執行受諾文言付の公正証書が作成された。しかし、当該公正証書に記載された利率等の条項が利息制限法に違反していたため、債務者は公証人法26条違反等を理由に、本件公正証書に基づく強制執行の不許を求めて請求異議の訴えを提起した。
事件番号: 昭和38(オ)237 / 裁判年月日: 昭和40年3月19日 / 結論: 棄却
公正証書には担保物件として土地および建物を供した旨の記載があるのに、その作成を嘱託した委任状には単に建物を供した旨の記載があるにすぎない場合にも、真実該公正証書記載どおりに作成すべき権限を有していたのに土地の記載を脱落したものであることが明らかなときは、右瑕疵は該公正証書の無効をきたす重大なものとは解されない。
あてはめ
本件貸借契約には利息制限法に違反する部分が含まれており、その部分は無効であると認められる。しかし、一部の無効が直ちに契約全体の無効を意味するものではない。したがって、利息制限法の制限内にある有効な債務の範囲については、依然として本件公正証書の執行力が維持される。公証人法26条違反の主張も、公正証書の債務名義としての効力を当然に否定する根拠とはなり得ない。
結論
一部が無効であっても全体が無効とならない限り、執行力を全面的に排除することはできず、有効な残存部分について強制執行を許容した原審の判断は正当である。
実務上の射程
公正証書が利息制限法超過等の強行法規違反を含む場合の請求異議の訴えの範囲を画定する。実務上、債務名義の一部に瑕疵がある場合でも、可分な有効部分については執行力を認める「一部認容」の処理(超過部分の執行阻止)を行う際の根拠となる。
事件番号: 昭和48(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和52年6月20日 / 結論: 破棄差戻
一、信用協同組合が、組合員に現実に借受を必要とする実質貸付額五五〇万円を貸し付けるにあたり、右貸付について十分な物的・人的担保があるのに、実質金利を高める等のため、取引条件として、組合員に、貸付額七五〇万円の本件貸付契約及び同四〇〇万円の別口貸付契約を締結させて実質貸付額を超過する六〇〇万円を貸し付け、その六〇〇万円を…
事件番号: 平成13(受)398 / 裁判年月日: 平成16年2月26日 / 結論: 破棄差戻
現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部…