一、信用協同組合が、組合員に現実に借受を必要とする実質貸付額五五〇万円を貸し付けるにあたり、右貸付について十分な物的・人的担保があるのに、実質金利を高める等のため、取引条件として、組合員に、貸付額七五〇万円の本件貸付契約及び同四〇〇万円の別口貸付契約を締結させて実質貸付額を超過する六〇〇万円を貸し付け、その六〇〇万円を即時二〇〇万円の定期預金及び四〇〇万円の割増金付定期預金として組合に預託させ、これに担保権を設定して払戻を制限し、また、実質金利が年一割七分一厘入毛余になるなど、判示の事情のもとにおいては、右各貸付契約及び各定期預金契約は、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の一〇にあたり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反するというべきである。 二、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する場合でも、その違反により、貸付契約が直ちに私法上無効になるとはいえず、また、右契約が公序良俗に反するともいえないが、両建預金及び超過貸付があるために実質金利が利息制限法所定の制限利率を超過しているときは、右超過する限度で貸付契約中の利息、損害金についての約定は、同法一条、四条により無効になるものと解すべきである。
一、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反するとされた事例 二、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する場合と貸付契約の私法上の効力
私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律2条7項5号,私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律9条,昭和28年公正取引委員会告示11号10,民法90条,利息制限法1条1項,利息制限法2条,利息制限法4条1項
判旨
金融機関による拘束預金を伴う超過貸付は、独禁法19条違反であっても直ちに私法上無効とはならないが、実質金利が利息制限法の制限を超える場合、その超過部分は無効となり、支払済みの超過利息は元本に充当される。
問題の所在(論点)
金融機関が優越的地位を利用して拘束預金を強いた貸付契約(不公正な取引方法)の私法上の効力、および実質金利が利息制限法を超過する場合の処理が問題となる。
規範
1. 独禁法19条(不公正な取引方法)に違反する契約の私法上の効力は、公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、直ちに無効とはならない。2. 拘束預金を伴う貸付が、その実質金利(名目利息から預金利息を控除した実質的な負担額を実質貸付額で除した割合)において利息制限法1条1項の制限利率を超える場合、利息制限法の法意に基づき、当該超過部分は無効として是正されるべきである。
事件番号: 昭和31(オ)643 / 裁判年月日: 昭和32年12月10日 / 結論: 棄却
公証人法第二六条に違反して作成された公正証書であつても、当然に債務名義たる効力を有しないものではない。
重要事実
信用協同組合である被上告人は、零細企業の上告人に対し、計1150万円の貸付を行う際、自己の優越的地位を利用して、そのうち計600万円を払い戻しが制限された「拘束預金」とすることを条件とした。この結果、上告人が現実に利用可能な「実質貸付額」は550万円となり、名目上の利息から預金利息を控除して算出した「実質金利」は年約17.1%に達し、利息制限法の制限(15%)を超過していた。
あてはめ
独禁法は公正な競争秩序を目的とし、公取委による弾力的な措置を予定しているため、19条違反が直ちに私法上の無効を招くものではない。しかし、本件の拘束預金は実質貸付額の契約と一体不可分に評価すべき取引条件であり、実質金利が利息制限法を超過している以上、同法の脱法行為を許さない観点から是正が必要である。したがって、制限利率を超えて支払われた利息・遅延損害金は、民法488条等の規定に従い残存元本に充当されるべきである。
結論
本件各契約は私法上有効であるが、利息制限法を超える実質金利の超過支払分は元本に充当される。原審の計算にはこれに反する違法があるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
拘束預金(歩積・合建預金)の私法上の効力を示した重要判例である。答案上は、独禁法違反の私法上の効力を原則有効としつつ、利息制限法による「実質的な規制」を及ぼす論理構成として用いる。実質金利の計算において、拘束性のない通常の預金や合理的な出資金は除外される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(オ)862 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
利息月八分の約定があつても、これがため消費貸借自体を無効と解すべきでない。