一 利息制限法違反の利息の支払を定めたからといつて、特別の事情のないかぎり消費貸借契約自体の無効を来さない。 二 利息制限法の利息を元金に組み入れ、これに対しさらに利息を付する定めは単に裁判上無効たるに止まり、すでに支払つた利息はその返還を請求することはできない。
一 利息制限法違反の利息の約定ある消費貸借契約の効力 二 利息制限法違反の利息を元金に組み入れこれに利息を付する定めの効力
利息制限法2条,民法405条
判旨
利息制限法違反の利息の定めがある金銭消費貸借契約は、利息部分が裁判上無効となるにすぎず、特段の事情がない限り契約自体が公序良俗に反し無効となることはない。また、制限超過利息を元本に組み入れた場合、その組入れや組入額に対する利息の支払は裁判上無効となるが、既に支払われた分については返還請求できない。
問題の所在(論点)
利息制限法に違反する高利の合意がある金銭消費貸借契約が、民法90条(公序良俗)により契約全体として無効となるか。また、制限超過利息を元本に組み入れた後の支払について返還を請求できるか。
規範
1. 利息制限法違反の利息の定めがある場合でも、借主が現実に利益を享受している以上、利息が高率であるという一事のみでは民法90条により契約全体が無効とはならない。ただし、公序良俗違反を基礎付ける「特別の事情」がある場合には無効となり得る。2. 制限超過利息の元本組入れ(重利の約定)は、利息制限法の趣旨に照らし、利息に関する定めとして裁判上無効とされるにとどまる。3. 任意に支払われた制限超過利息(組入後の利息を含む)は、不当利得として返還を求めることはできない。
重要事実
上告人は、自己の事業資金に充てるために相手方から金銭を借り入れたが、その金銭消費貸借契約には利息制限法を超える高率な利息の定めがあった。また、当該制限超過利息を元本に組み入れる合意がなされ、上告人はその組入額に基づいた利息の支払いを行っていた。上告人は、利息の定めが公序良俗に反するため契約全体が無効であること、および支払った超過利息の返還等を主張して争った。
あてはめ
1. 本件契約において、上告人は事業資金の調達という経済的利益を現実に受けており、制限超過利息部分は裁判上の請求が否定されることで保護されている。利息が高率であること以外に、公序良俗違反を認めるべき「特別の事情」は上告人によって主張・立証されていない。2. 制限超過利息の元本組入れについても、通常の利息制限法違反と同様に、裁判上の請求が認められないにとどまる。3. 既に任意に支払われた超過利息分については、当時の判例法理(※後に変更されるが本判決時点)に照らし、返還を認めるべきではない。
結論
金銭消費貸借契約自体は有効であり、利息制限法を超える部分のみが裁判上無効となる。既に支払った制限超過利息については返還を請求できない。
実務上の射程
利息制限法違反が直ちに契約全体の公序良俗違反(民法90条)を構成しないことを示す基本判例。ただし、任意支払の返還否定については後の最大判昭39.11.18により変更されており、現在は制限超過利息の支払は元本に充当され、完済後の超過分は不当利得返還請求が可能である点に注意が必要。答案では「契約自体の有効性」の論証において参照すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)856 / 裁判年月日: 昭和38年7月11日 / 結論: 棄却
旧利息制限法のもとでは、利息、損害金として任意に支払われた金額が、同法所定の利息損害金の率を超えていても、超過分を元本の支払に充当すべきではない。