判旨
行政上の取締規定に違反した無尽講契約であっても、当然に私法上の効力が無効となるものではなく、また、落札講金に対して多額の掛戻金を支払う約定も直ちに公序良俗に反して無効とはならない。
問題の所在(論点)
1. 取締法上の指定を受けずに組織された無尽講契約の私法上の効力(取締規定と効力規定の区別)。 2. 受領額を大幅に上回る掛戻金を支払う無尽講契約の公序良俗違反(民法90条)および利息制限法適用の成否。
規範
1. 法律の規定が単なる行政上の取締規定に過ぎない場合、これに違反する契約であっても、当然に無効となるものではない。 2. 組合契約の性質を有する無尽講契約において、給付を受ける講金と比較して多額の掛戻金を支払う約定が含まれていても、その事実のみをもって直ちに公序良俗(民法90条)に反し無効であるとはいえず、また利息制限法の制限にも当然には抵触しない。
重要事実
上告人(会員)は無尽講において落札し、11万7,000円の講金を受領した。その際、計46回にわたり総額32万2,000円を掛戻し返済することを約したが、この掛戻金は受領額を20万5,000円も超過するものであった。上告人は、当該無尽講が大蔵大臣の指定を受けておらず貸金業等の取締法に違反すること、および超過額が多額で公序良俗に反すること等を理由に、契約の無効を主張した。
あてはめ
1. 貸金業等の取締法のうち非営業無尽に準用される規定は、行政上の取締規定に過ぎない。したがって、大臣の指定を欠く違反があっても、契約自体の私法上の効力は否定されない。 2. 本件は消費貸借ではなく組合契約の性質を有する無尽講である。落札者が受領額を大幅に超える掛戻金を支払う債務を負うことは無尽の仕組み上あり得ることであり、その超過額が多額であるという一点のみで、直ちに社会妥当性を欠く公序良俗違反とは評価できない。また、消費貸借ではない以上、利息制限法の直接適用により無効とされる理由もない。
結論
本件無尽講契約は有効である。取締法違反や掛戻金の多額性は、直ちに契約を無効とする事由にはならない。
実務上の射程
法規の違反が契約の無効を招くか否か(取締規定か効力規定か)の判断において、法の目的が行政上の秩序維持にあることを根拠に私法上の有効性を認める際の論拠として活用できる。また、射程として、利息制限法が適用されない投資的・組合的契約における「暴利」の判断枠組みを検討する際にも参照される。
事件番号: 昭和28(オ)1313 / 裁判年月日: 昭和30年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無尽業法に基づく主務大臣の免許を受けずに営まれた無尽契約であっても、その私法上の効力は否定されず、公序良俗にも反しない。 第1 事案の概要:被上告人が無尽(現在の頼母子講や無尽会社に相当する制度)を業として営んでいたが、無尽業法が定める主務大臣の免許を得ていなかった。この免許を受けずになされた無尽…